ビジネス

2020.08.27 10:00

キーワードは共感、ニューノーマルの課題をデザインの力で解決する3つの好例

寄り添うデザインとアイデアは心の穴を埋めてくれる/イラスト:ShutterStock.com


少数派の人の悩みが、世界を変えるイノベーションの出発点になる


このマスクのさらに興味深いところは、聴覚障害を持たない人々にとっても、マスク着用時の課題に気づかされること。教育現場や、接客、役所の窓口対応など、互いにマスクを付けたまま会話をすることは「新しい生活様式」として既によく見られるシーンだ。
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そうした場面では、相手の言葉がはっきり聞こえないために何度か聞き返したり、的確に言葉を伝えたいという気持ちからマスクを外したくなることは誰もが経験していることではないだろうか。

そんな時にも、自分の表情や声をしっかり相手に届けられるマスクは大いに活躍する。装着することで互いの安心を担保しつつ、会話が必要なシーンでは表情から視覚的に自分の気持ちを相手へ伝えることもできる。

今回のクラウドファンディングが原型となり、今後の「コミュニケーションの場に適したマスク」が様々なシーンで、多くの人々から愛されるものとして使われていく可能性を強く感じさせられる。
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2. 公園での時間を互いに気兼ねなく楽しむためのデザイン


外で過ごすのに最高の季節がやってきたというのに、公園やビーチへ出かけるときのワクワク感は素直に味わえなくなってしまった。広い空間に出かけても、常に周囲と互いの距離感に気を張りながら過ごすことになる。心身ともに解放的になりたかったはずなのに…。

次に紹介するのは、イタリアの建築家集団SBGAが考案した「C’entro」だ。これは、コロナ禍でも屋外の公共空間でリフレッシュしたい人たちが、ソーシャルディスタンスを自然に保ちながら繋がることのできるプロダクトだ。

公園で距離をとる施策
SBGAコーポレートページより

C’entroはガラス繊維でできた棒が連なったフレームで、大きな虫眼鏡のような形をしている。広げると直径2mになる輪の中には、大人2名までなら余裕を持って寝そべることができる。

外側には周囲の人がとるべき距離の目安である1.5mの棒状のパーツがついており、その形状とカラフルな色彩によって、周囲の人がとるべきソーシャルディスタンスを視覚的に伝達し合えるというわけだ。

公園で距離をとる施策の具体的な解説
C’netro:手で簡単に畳むとサイズは80cm x 10cmまでコンパクトに。重さは500gなので誰でも手軽に持ち運びが可能だ。

平時であれば、自分の周りにガラス繊維を並べた以上の意味は感じられなかっただろう。しかし常に他者との距離感を意識しながら行動を判断しなければいけない日々では、この色鮮やかなフレームが敷かれることによって、公共空間に「安心できる空間」を生み出すことができる。

屋外でマスクを外せる喜びが生まれる


その安心は、個人がそれぞれ感じられるものだけではなく、そこで過ごす周囲の人々と与え合うことができるものであり、互いの心理的負担が軽減できるようになるのだ。

そしてさらに、C’entroの中ではマスクを外して過ごすことも可能だ。公園での束の間のリフレッシュ時間を楽しみたい人同士は、この共通アイテムがあることによって、身体的な距離を保ちながらも自然と会話を楽しめる。

公共空間をシェアする際、人との間に壁を作ることなく、安心と同時に心地よい時間を分かち合うことができる、そんな体験がデザインされているプロダクトだ。
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文=Yuma Mitsui(btrax)

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