ビジネス

2020.08.21

アップルのサプライヤーで広がる「脱中国」の動きは本格化するか

北京にオープンしたアップルのフラッグシップストア(Photo by Kevin Frayer/Getty Images)


中国と同様の労働力を擁し、まずまずの物流網を備え、さらに税金が安く、規制がゆるやかな環境を見つけることができれば、多国籍企業はこうした国に向かうはずだ。実際、こうした動きはすでに起きており、フィリピンやベトナム、インドネシア、メキシコに拠点が移されている。

地政学的な要因も、フォックスコンのような大手企業が中国から拠点を移す理由となっている。特に、製造される物品が国家安全保障のために不可欠とされるものであればなおさらだ。その顕著な例が、トランプ米大統領が8月6日に署名した、多くの医薬品を製造するのに使われている薬剤について、米国内での製造を促す大統領令だ。

半導体製造ファウンドリ大手の台湾TSMCは、米国南西部で120億ドル規模のナノチップ製造工場の建設を計画している。これについて、エンタープライズ向けテクノロジーを扱うニュースサイト「The Register」の記者でロンドンに拠点を置くマシュー・ヒューズは、米国政府が「ニンジン」をちらつかせたことは間違いないと記している。

ヒューズはさらに、ウィスコンシン州に建設されるフォックスコンの工場についても言及している。巨額の補助金が投入されるこの工場の建設に関して、同州はかなりの額を公費で負担することになっている。

これは、中国と競合する地域が、時として払わされる代償だ。

中国でデバイス製造工場が建設される際には、その場所が華やかな都会である上海の郊外であろうと、10マイル(約16キロ)近辺の人以外は名前すら聞いたことがないような三級都市の一地域であろうと、地元の政府は相当額の費用を負担している。ウィスコンシン州は、フォックスコンの工場誘致に30億ドルを拠出したと報じられているが、中国でも同じような施策がとられている。

これによって、何百万という中国人労働者の雇用が確保される反面、中国の製造システムとの競合に苦慮する世界の労働市場が、しばしばその割を食うことになる。中国の製造業は確かに最新式で現代化が進んでいるが、市場原理が働いているとは言えず、金銭面は度外視されている。中国が製造業の確保に努めているのは、根本的なことを言えば、雇用の確保のためだ。

フォックスコンも、雇用のために動くだろう。物流網や労働力、自社に有利な税制度が用意され、近隣に大きく堅固な顧客基盤がある場所なら、同社はどこにでも向かうだろう。あらゆるものが中国で製造・出荷される状況は、もはや過去のものとなりつつある。

翻訳=長谷睦/ガリレオ

ForbesBrandVoice

人気記事