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2020.08.25 07:30

ビールからジンを作る。コロナ禍で「ライバルの協業」が生んだ新たな価値

坂元 耕二
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まずジンについて少し予備知識が必要だ。ウイスキーなどとともに「世界4大スピリッツ」の一つであるジン。みんな大好きジントニックなど、カクテルとしてもお馴染みだが、ストレートでも楽しめる大人のお酒だ。

ジンは「ベース・スピリッツ」と「ボタニカル」で作られる。ベースとは文字通り基本となるスピリッツで、穀物由来のお酒であるグレーンスピリッツや、果物由来、サトウキビ由来など、さまざまなベースがある。今回の取り組みはベースが「ビール」ということだ。

ここに、ジュニパー・ベリー(杜松の実)やハーブなどのボタニカル(草根木皮)を配合(レシピという)し、ジンに個性が生まれる。ドライジンの場合は再び蒸留し純度を上げるが、再蒸留しない今回のケースはコンパウンドジンと言われ、ベースの名残と浸漬させたボタニカルの個性が魅力となる。これは日本でも数えるほどしか生産されていない。

使用されたボタニカル
実際に使用されたジュニパーベリー(左)とシナモン(右)。こういった自然由来のボタニカルが決め手となる

試飲でうまいと言葉が漏れた


山本によれば、今回は3社でトップオブトップのクオリティを目指したという。

「エシカルだから、余剰ビールの再生だからこのくらいでいいだろうという発想はなかったですね。エシカル・スピリッツには優秀なレシピの責任者がいて、彼がいわゆるお酒の“設計士”なんです。つまり、バドワイザーという建物をイメージして新しい建造物を建てようとする時に、ビールはホップの苦味が鍵になるので、普通使わないホップをボタニカルとして使ってみてはどかとか、突き詰めてレシピの設計をします。それを、月桂冠さんの職人蒸留者の方と詰めるのです」


エシカル・スピリッツ 代表取締役 山本祐也

すかさず大倉が反応する。

「蒸留は、製造工程に乗せると小ロットや試飲用のものを作れない。ある意味、一発勝負なのです。理論力のあるレシピを出すエシカル・スピリッツさんと職人でキャッチボールしながら設計を細かく仕上げるのです。実際に建物を建てる意味で言えばそれは月桂冠側なので、二人三脚で設計と技術を合致させなければなりませんでした」

月桂冠の大倉
月桂冠 取締役 営業副本部長 大倉泰治

バドワイザーは、144年の長い歴史を持つ。人気の個性のひとつがビーチウッド製法と呼ばれるもので、ブナの木片とともに熟成される工程だ。これが「コク」全盛期のビール業界にあって、バドワイザーらしいフルーティな香りと飲みやすさにつながっている。この最大の個性やホップの苦みも設計士は考慮し、蒸留者はジンとして再生させなければならないのだ。大倉は月桂冠の「腕の良さ」に胸を張る。

「月桂冠でいうと、設計アイデアを現場としてよりよく回す、形にすることを徹底していました。これまで蒸留にたずさわってきた経験が発揮され、うまく商品に仕上げる事ができました。今回のチャレンジは、日本酒の場合の麹を生み出しお酒の元から作る工程と同じで、むしろ地酒ブランドさんがやるキメの細かい仕事です。それは私たちがいつもやっていることでもあります。なかなか消費者の方には伝わっていないですが(笑)」
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文=坂元耕二 写真=西川節子(人物・素材)

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