同社は8月18日、事業者がプライムマークを付けて自ら出荷し、2日後までに配達する「Seller Fulfilled Prime(セラーフルフィルド プライム)」プログラムに登録している場合、その事業者には2021年2月以降、週末(土曜日)にも商品の発送を行うことを求める方針を明らかにした。また、現在は対象商品を翌々日までに届ける地域を限定することができるが、これを米国内の全域とする。
アマゾンはこうした変更を通じて、新型コロナウイルスのパンデミックで発生している配達の遅延を解消し、最終的にはすべてのプライム配送を2日後までに完了させることを基準としたい考えだ。
同社はこれまで、独自の物流ネットワークを構築し、物流大手ユナイテッド・パーセル・サービス(UPS)やフェデックス(FedEx)などへの依存を減らすことを目指し、この分野に多額の投資を行ってきた。たとえば、物流の最終拠点から届け先までのラストマイルの配達を強化するためにドライバーを増員したり、各地域の宅配業者や一般のドライバーに配達を委託(ウーバーのように)する件数を増やしたりしてきた。
だが、同社によれば、米国ではパンデミックの発生以前でさえ、商品をプライム配送の対象としている事業者からの発送のうち、実際に翌々日に届けることができていた割合は、16%未満だったという。配達の遅れを招く一因となっているのは、週末に出荷を行わない事業者が多いことだと指摘されている。
実現は困難か
ただし、これらの事業者にとって、プライム配送の対象となる商品を実際にすべて翌々日までに配達することは困難だ。マーケットプレイスが専門のコンサルティング会社、バイ・ボックス・エクスパーツ(Buy Box Experts)の最高戦略責任者(CSO)、ジェームズ・トムソンは、次のように述べている。
「アマゾンはこれ(配達までに時間がかかりすぎる事業者への統制の強化)を、どの程度の事業者が実際に2日後までの配達を実現できるのか、見極めるためのテストとして行うのだろう」
翌々日までに全米のあらゆる地域に商品を届ける方法を見いだせない事業者の多くは、結局は在庫の保管や梱包、配送、カスタマーサービスなどにかかる手数料を支払い、アマゾンにこれらを代行してもらう「フルフィルメントby Amazon(FBA)」を利用するようになると考えられる。
アマゾンのマーケットプレイスを利用する事業者向けのコンサルティングやブランドマネジメントなどのサービスを提供するイヴォルヴド・コマース(Evolved Commerce)の幹部は、「流通チャネルまたはサプライチェーンが確実に構築されていない限り、事業者の大半はアマゾンのFBAを利用するほかない」と指摘している。
いずれにしても、アマゾンが目指すのは翌々日までの配達だ。だが、それを実現できるのは、アマゾンだけなのかもしれない。eコマース分野が専門の調査会社マーケットプレイス・パルス(Marketplace Pulse)の創業者、ユオザス・カジウケナスは、自社で商品を発送している事業者のなかで、「プライム配送の標準的なニーズを満たせるものは、ほとんどない」との見方を示している。