「早生まれ」30〜34歳の所得、遅生まれより4%低い?

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一方、同級生や先生たちとの人間関係について聞いた質問への回答を見ると、早生まれの子どもたちは、こうした人間関係があまり上手くいっていないと回答した。また、スポーツなどへの参加率が他の子どもたちと比べて低いこともわかった。これらは非認知能力の発達に悪影響を及ぼすことが懸念される。

30〜34歳の所得、早生まれは「4%低い」


先行研究によると、早生まれ、遅生まれの差は大人になっても消えず、30〜34歳の所得が早生まれの方が約4%低くなるそうだ。これには、入試制度が早生まれの不利を固定化する方向に働いていることが背景にあると考えられる。また、上記で説明したような傾向から、早生まれの子どもの非認知能力が十分に育成されていないことも影響していると考えられる。

家計所得や出生時の健康状態と生まれ月が相関しているのではないかと思われるかもしれないが、就学援助の受給(低所得の指標)や出生体重とは相関していなかった。少なくとも、そうした要因が結果を引っ張っているという証拠はまだ確認できていない。

(これまで紹介してきたデータは、統計分析に基づくものである。一般に統計分析とは、集団の傾向を明らかにするためのものであり、全ての個人に当てはまるわけではないということは押さえておきたい)

親として、早生まれの子供にできること


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こうした問題は制度が生み出してしまっているため、本来は社会全体で解決していくべきことだ。しかし、早生まれの子を持つ親である人、あるいはこれから子どもを持とうと考えている人にとっては、まず親として自分の子供に何ができるかを考えたいところだろう。

そこで絶対に言ってはいけないのは、「早生まれだから仕方ない」という言葉だ。これを言ってしまうと、子どもに「自分はできなくて当然なんだ」と思わせてしまい、本来できるはずだったこともできなくなってしまう。親が早生まれであるということを意識しすぎて、子どもにコンプレックスをつくってしまっては本末転倒だ。

それよりも、早生まれならではの良い面に目を向けることをぜひ意識してみてほしい。

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たとえば、あえて目標を立てずとも、早生まれの子にはすでにクラスにお手本が存在している。おもちゃの使い方も、周りの様子を見て自然に覚えていく。早生まれの子にとって、幼稚園・保育園は、毎日が刺激の連続だと言える。

保育の現場で長くキャリアを積むM.Y.氏も、次のように語る。

「早生まれ問題、保育現場の声では、それほど問題に上がりません。園では入園考査がありますが、3才という年齢誕生月を考慮して、判断させていただいているのは現状ですが。

1年近い月齢の差は、友達同士の関わりで縮めることができます。実際にこんな例がありました。1年近く離れた友だちが鉄棒で空中逆上がりをし始めたことに刺激を受けた早生まれの子が、練習を重ねて、運動会までに出来るようになったんです」

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上記のような経験は、その後の子どもの人生において大きくプラスになるだろう。他の子どもたちより上手くいかない経験をする機会が多いことは、優しく強い人間に育ってほしいという、親であれば誰もが願う点に大きく寄与するのではないだろうか。
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文=長谷川寧々 編集=石井節子

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