IBMが狙う「医療データ解析」市場 人工知能をアップルに提供

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医療分野のビッグデータ処理に関し、大きな転機が訪れている。IBMは今後、同社の人工知能システム「Watson」を、アップルのHealthKitをはじめ、数多くの健康データを扱う企業に導入することを発表。この分野の主要プレイヤーとなると宣言した。

同社の新事業部門の名称は「Watson Health(ワトソン・ヘルス)」。

「我々の事業モデルやスケールであれば、この業界に大きな変革をもたらすことが可能だ」と、同社研究所の上級副部長、ジョン・ケリー氏はコメントした。
IBMでは約2000名の社員を、Watson Health事業部に投入。医療関連テクノロジー大手の2社、ExplorysとPhytelの買収も発表した。
さらに、注目すべきは下記の3社との取り組みだ。

・アップル社はWatsonのシステムをHealthKitやResearchKitに導入。個人の健康情報を収集し、そのデータを臨床試験に活用する試みを始めている。
・ジョンソン・アンド・ジョンソン(J&J)社は、膝や腰の手術の分野で最大のインプラントメーカー。Watsonを用い、患者ごとのカスタマイズ対応の仕組みを構築し、手術向けのコンシェルジュサービスを始動する。
・Medtronic社は心臓病や糖尿病関連の埋め込み型デバイスを製造する企業。Watsonを使用してデータを収集し、医療関連機器の動作を分析する。

医療ビッグデータの解析は、今後さらなる成長が見込める分野。IBM以外にも、NantHealth社や、Flatiron Health社といった新興企業が参入を狙っている。従来のヘルスIT分野の大手、Cerner社やEpic社も新技術の開発にしのぎを削っている。

著書“The Digital Doctor”で知られるカリフォルニア大学サンフランシスコ校のRobert Wachter氏は次のように述べている。
「この分野では、収集したデータの統合や分析および解析が重要な課題となる。それが実現できた際に、大きな進歩がもたらされることになるだろう」

文=マシュー・ハーパー(Forbes)/ 編集=上田裕資

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