ビジネス

2020.08.20

ジャック・ドーシーの後悔。ツイッター創業時に「しなかったこと」

ツイッターCEO、ジャック・ドーシー(Getty Images)


これらのアクションは、同社内でも長い間議論されてきた、「社会に重要な影響を与え得るアカウントから発出された問題投稿にどう対処するか」という問題に、ひとつのエポックメーキングな決着をつけた動きともいえる。

フェイスブックもこれを追いかけるように、7月、大統領選挙関連の投稿に「ラベル」をつけることを開始した。とはいえ、同社のこの決断は、どこか「ソーシャルメディア上の誤報流通問題に、もっと積極的になるべきだ」との社会的プレッシャーを受けたアクションという印象は否めない。

英国BBCのマリアナ・スプリング記者も、「フェイスブックのこのアクションは、ツイッターが5月にぬかりなく対策したことを受けた後追い対策の感がある」と論評している。

「わが子のしつけ」を厳しくし直すために


ツイッター社のドーシーCEOは、同じく前述のインタビューで、創業時、ツイッターという「製品」の細かい仕様やデザインを決める時に専門家と議論しなかったことは過ちだったとも打ち明けている。たとえば「リツイート」と「コメントつきリツイート」の重要性の差異や、「Like」ボタンの隣に数字を表示させることの意味などについて、ゲーム理論の専門家を動員して精査するべきだった、と振り返っているのだ。

ドーシーのこの創業時への回想、とりわけそれについてインタビュアーの質問に答える際の静かな息遣いからは、創業時は彼自身も予想だにしなかった「ソーシャルメディアの運命」、すなわち「分極化や誤報との果てしない闘い」の最前線に立つという決意が伝わるようだ。

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Getty Images

ツイッター社は現在、ユーザーがツイートを読まずに「Like」ボタンを押そうとすると、「本当にいいの?」と確認メッセージを出す新仕様もテストしているという。

同社とドーシーは、ユーザーによってどんどん自分たちの手から離れて「独り立ち」してしまったプロダクトをあらためて「制御」するため、今後どんな対策を繰り出していくのだろうか。

「テクノロジーで世界をよりオープンにできる、社会問題も解決できる」という大望からスタートしたはずのSNSが、原初にたち戻り、もう一度ポジティブなプラットフォームとして生き残れるか。それは、われわれユーザー自身の今後の処し方に関わってくることも確かだ。

文=石井節子

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