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2020.08.20

テスラ、世界最大の蓄電施設を着工 増強すればシスコ全世帯に6時間供給可能

(c) Tesla

米テスラと米電力・ガス大手PG&Eは、カリフォルニア州モスランディングで大規模な蓄電施設を着工した。完成すれば世界最大の蓄電設備となる見通しで、来年の稼働開始をめざしている。

施設には、テスラのリチウムイオン蓄電システム「Megapack(メガパック)」を256基設置。そこから、最大730メガワット時の電力量を最大182.5メガワットの出力で最大4時間、送電網に送ることができる。

テスラによると、両社にはこの施設の蓄電能力を最大1.2ギガワット時まで拡充する選択肢もあるという。これはサンフランシスコの全世帯に6時間電力を供給できる規模だ。

設計・建設・保守管理はテスラとPG&Eが共同で行い、所有権はPG&Eがもつことになっている。

モスランディングの施設のような大規模な蓄電施設は世界各地で計画されており、炭化水素ベースの発電システムから、ユーティリティスケール(産業規模)の蓄電設備に支えられた再生可能エネルギー発電への移行の先触れとなっている。

PG&Eのフォン・ワン上級副社長は「電池を用いた電力貯蔵は、電力網の全体的な効率性や信頼性を向上させ、再生可能エネルギーを統合し、化石燃料を使った発電への依存を減らすうえで、不可欠な役割を果たす」と強調。モスランディングの施設については「その規模、目的、臨機応変さからして、ユーティリティスケールの電池の開発や発展で画期的なものになる」と述べている。

現時点で世界最大の蓄電施設は、テスラがオーストラリアのホーンズデールで手がける施設だが、モスランディングの施設の蓄電能力が1.2ギガワット時まで引き上げられた場合、ホーンズデールの施設のおよそ10倍の規模になる。

モスランディングの施設ができれば、電力網での需要急増への臨機応変な対応や再生可能エネルギー発電による負荷の平準化の向上が期待される。PG&Eによれば、この施設による消費者の電気代節約額は20年間で1億ドル(約105億円)超にのぼる見通しだという。

電力会社による再生可能エネルギー発電や電池蓄電技術への投資が増えていることからすると、天然ガスや石炭企業には今後、険しい道のりが待ち構えていそうだ。また、原子力発電がほかの電源とどう競合していくのかも不透明だ。いずれにせよ、まだはっきりとは目に見えていないかたちで電力産業の大きな変革が進んでいることは間違いないだろう。

編集=江戸伸禎

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