Forbes BrandVoice!! とは BrandVoiceは、企業や団体のコンテンツマーケティングを行うForbes JAPANの企画広告です。

2020.08.20 16:00

地球温暖化と戦うフットウェアブランドAllbirdsがカーボンフットプリント・ゼロを目指す理由とは

photo:Allbirds cofounder_Tim Brown

フットウェアブランド、より大きく言えばファッションブランドとして、世界で初めて全製品にカーボンフットプリント表示を行ったオールバーズ。そもそも「待ったなし!」の地球温暖化問題に取り組むためのサステナブルブランドたることを標榜して立ち上げられた背景や世界における意識の変化、今後の展望とミッションを、共同創業者のティム・ブラウンへの独占インタビューで聞く。


今年1月、シリコンバレー発のフットウェアブランド、オールバーズの日本1号店が東京・原宿にオープンした。2015年に創立したばかりの同ブランドは、レッドオーシャンとも言われるフットウェア業界において独自の立ち位置を得て、当初はEコマースのみで始めたところが、現在では世界で20店舗を展開するに至る急成長を遂げている。

米、独の巨人ブランドを抑えて「世界一履き心地の良いスニーカー」と称される製品には、どのような秘密があるのか。またファッションブランドとして世界で初めて導入した、全製品におけるカーボンフットプリント(温室効果ガス排出量)表示の実施にはどのような思想が込められているのか。共同創業者のティム・ブラウンに質問をぶつけてみた。



──オールバーズのフットウェアは「世界一履き心地の良いスニーカー」と称されています。そこには実際の製品の評価に加え、徹底したサステナビリティ思想のもとにつくられていると知る消費者の理解と共感も表れていると考えますが、いかがでしょうか?

ティム・ブラウン(以下、ブラウン):我々が使用するのは、自然の恵みとも言える天然素材です。代表的なモデルに用いられているのは、私の故郷でもあるニュージーランドでつくられる最上級のメリノウール。トップブランドがスーツ生地に用いてきたような、非常に優れたグレードのものです。

それを、無駄な装飾を一切取り去ったシンプリシティを極めたデザインにまとめることで、機能性に集中する製品づくりを行ってきました。オールバーズは創業時からサステナブルなブランドであることをモットーとしてきましたが、それに加えて真に優れた使用体験、つまり履き心地を提供できているということに対する評価でしょうから、とても嬉しいですね。

──そもそもニュージーランドの代表まで務めたプロサッカー選手が、なぜフットウェアブランドを始めたのでしょうか?

ブラウン:私自身、スニーカーをコレクションするような、いわゆるシューズマニアではちっともありませんでした。根本にあったのは地球温暖化を食い止めるためのサステナビリティの実現であり、着眼したのはインパクトの大きさでした。世界の二酸化炭素排出量のおよそ10%をファッション産業が占めている中で、フットウェアの産業規模の大きさが重要だったのです。世界では年間200億足ものフットウェアがつくられ、同じだけどんどん捨てられています。

そうしたサイクルの中で、環境負荷を軽減する必要が喫緊だと考えたのです。私の共同創業者のジョーイ・ズウィリンジャーは再生可能エネルギーに関するスタートアップで働いていましたが、彼との出会いがきっかけとなって、ブランドを始められることができました。目標は、はじめもいまも、ネットゼロインパクトのフットウェアを生み出すことです。

──強豪ひしめく業界で、なぜすぐに結果を出すことができたのでしょう?

ブラウン:我々が、業界をまるで知らないアウトサイダーだったからでしょう。慣習や既成概念にとらわれることなく、環境保全につなげることを最重要視した製品の生産および供給体制を考えられたことが強みとなりました。我々にあったのは、どこよりも環境負荷の小さいフットウェアをつくり、世界の人々に履いてもらうという単純至極な命題だけでした。

その実現のために、最も効率的な流れを検証した結果、垂直統合型のビジネスモデルを構築して、生産から流通まで、つまり製品をつくってお客様の手元にお届けするまでのすべてのプロセスを、従来の業界にはなかった新しいやり方としました。卸売を排除することでコストをカットし、さらにはブランド力を高める顧客との1on1の関係性を築けたことが大きかったと思います。

2015年にブランドを創設し、2016年にアメリカとニュージーランドで最初のモデルを発売しましたが、それが18カ月で100万足を売り上げたのです。型数も1モデルしかない、卸売もしない、小売店すら当初はなくて、販路もオンラインだけだったにもかかわらずです。



 ──そうした成功は、どんなことを意味していたのでしょうか?

ブラウン:大きなビジネスを構築することと、環境保全につながるサステナブルビジネスを成功させることが、必ずしも乖離していないことを証明できたのではないでしょうか。

オールバーズを創設した当初、海外の工場を訪ねて我々のサステナビリティにかける想いを話して回ったのですが、もっとサステナブルな素材を使いたい、もっとコストがかかってもいいから再生可能エネルギーを使えないか、といった相談をすると、誰もが「なんでわざわざ?」と言って怪訝な顔をしたものです。「あなたたちは気でも狂ったのか?」とでもいった対応でした。

でも我々ははじめから、どちらも両立できると信じていました。さらに、いますぐにでもやらなければならない! というミッションに燃えていました。そのためにも、まずは無駄を省くための商流改革が必要でした。それがさっきお話しした垂直型ビジネスモデルです。製品自体も、デザインのためのデザインをこねくり回すのではなく、よりサステナブルにつくるための進化を、目には見えない部分でも貪欲に取り入れていきました。そのスピード感たるや、ファッションビジネスではなく、むしろソフトウェアやテクノロジー開発の分野に見るような感覚でした。

オールバーズは世界に500人を超える従業員を抱えるいまも、地球環境の改善を一刻も早く実現させることをミッションに、素材開発から製造過程、流通におけるすべてのプロセスにおける改善と進化に注力し続けていて、その成果は日に日に形になってきています。環境負荷軽減と、企業として利潤を出すことの両立が可能であることを証明できた結果、いまでは例えばアディダスのような巨大企業とアライアンスを結び、知識や考え方をシェアできるまでに至っています。まもなく、アディダスとのコラボレーションモデルをお目にかけることができるでしょう。

──世の中のサステナビリティに対する認識の変化も、後押しになっていますね?

ブラウン:共同創業者のジョーイは2015年の時点で、サステナブル革命が10年以内に起きると確信していました。それと同時に、科学的な見地からも経済的見地からも、ネットゼロインパクトのビジネスをとにかく大至急実現する必要性を語っていました。実際、世の中はそのような方向に向かっていったわけです。

スウェーデンの環境活動家グレタ・トゥンベリさんが若者たちの間にムーブメントを起こしたのは、2年前のこと。それも後押しとなり、人々の意識の変化はどんどん加速しています。腰の重かったアメリカの企業もようやく目覚め始め、いや、消費者の意識の変化に気付いたからでしょうが、サステナブル企業と言えるようにいまの仕組みを改革する必要性を認識するようになりました。しかしそのタイミングはもはや2050年でも2040年でもなく、いますぐでなくてはならないということを、もっと強く意識しなくてはなりません。いまや消費者の側でも、彼らがお金を払う先の企業に対して、情報の透明性を求めるのと同時に、実際にエシカルに行動することへの要求を高めています。そうした機運の高まりを鑑みると、ようやく我々はサステナブル革命のファーストステップにたどり着いたと言えるのではないでしょうか。

──それを刺激し、牽引するのが、オールバーズがファッション業界で他に先駆けて導入したカーボンフットプリントの表示ですね。

ブラウン:私たちの起業の理由が、そもそもカーボンフットプリントのゼロ化を実現することでした。他の誰でもない、まず我々がそれをやらなければならないと信じていたからです。とはいえ、まだ解決しなければならないさまざまな問題と向き合っている現段階では、製品をつくるところから廃棄に至るまでのプロセスにおいて、どれだけのカーボンフットプリントを排出しているのかを計測すること、つまり知ることからスタートしようと考えたのがきっかけです。現状、オールバーズのフットウェアはおよそ8〜9㎏のカーボンフットプリントとなっていますが、その値に対してきちんとしたオフセット行動を速やかに取っており、企業として責任が取れるように努力を続けています。

──市場から、そしてステークホルダーから、すぐに理解は得られたのでしょうか?

ブラウン:「そもそも二酸化炭素のkgって何?」という声もありましたし、例えば「カーボンフットプリント9.1kgのフットウェアは優秀なのか否か?」という声もありました。もっと言えば、アメリカではkgの単位を使わないので、「よく分からない」という声が大勢を占めていました。そんな状況を改善してくれる大きな手助けをしてくれた存在に、彼がいたのです。そう、ハリウッドスターのレオナルド・ディカプリオです。


photo:LDC_Sitting_Kauri-Marine

彼は早い段階からの環境問題提唱者でした。機会あるごとに、気候変動などの問題を話題とし、発言を続けてきました。彼はオールバーズのファンになってくれて、投資もしてくれ、カーボンフットプリントをすべての製品に記載することについても、力強く背中を押してくれたのです。難しく、かつ複雑なこの問題に対して世間の関心を惹くためにも、彼のような影響力を持つ理解者を得られたことは本当に幸運でした。

──カーボンフットプリント表記がもっと世界中に浸透したら、我々のライフスタイルはどう変わるでしょうか?

ブラウン:明日急に、すべての消費者が賢い選択ができるようになるとは思っていません。これからも、人間にはフットウェアが必要です。輸送も、車も、エネルギーも必要です。しかし、我々がこの地球上に存続していくためには、ビジネスも社会も、ネットゼロインパクトへ向けた革新に速やかに取り組む必要があります。カーボンフットプリントを、世界のどこででも通用するような統一化された単位として用い、ゼロにできない場合には速やかなオフセットに取り組むこと。フットウエア業界におけるネットゼロインパクト製品の開発は、我々の重要な任務として認識しています。

まとめると、まずこれからあらゆるビジネスは、カーボンインパクトを計測し、認識しなければならない。次に、その値を下げるために変革を起こさなくてはならない。3つ目に、誰もがネットゼロビジネスを創造するために必要なオフセットに取り組み、経済的インセンティブを用意すること。

それが叶えられない企業とそこからつくられる製品は、遅かれ早かれ消費者からそっぽを向かれるでしょう。同じビジネスを続けられなくなる事業者も現れるはずです。

──最後に、いまは世界規模でコロナ禍の大変な時代にありますが、オールバーズはどのように成長のビジョンを描いているのでしょうか。そして世の中はこれからどう変わっていくのでしょうか。

ブラウン:いまは本当に経験したことのないような大変な時期で、しかも世界中が平等に同じ禍に見舞われています。でも、世界中の人々が同じ問題解決を目指して一緒に取り組む姿は、未来に対する希望を呼び起こしてくれます。そしてそこには、学びもあるはずです。人々は以前と同じように空を飛び、列車や車に乗り、旅をすることが少なくなった。その結果、思いもよらず世界の大都市圏では空気がきれいになり、青空が広がりました。これまで、得てして「絵に描いた餅」とも思われてきた二酸化炭素排出量の削減が、不測の事態下とはいえ、やればできると感じた人も、少なくはないはずです。

オールバーズもほとんどの店舗をクローズせざるを得ませんでしたが、スポーツジムがクローズしている中でランニング人口が増えたり、フィットネスに対する関心も高まり、Eコマースを中心にビジネスは好調に回り続けています。最近になって新製品をローンチさせましたし、アンダーウェアコレクションもスタートさせ、大きな反響を得ています。

そして私は、世界的に経済活動が停滞しているいまこそが、これまでの経済最優先の価値観を思い切って捨て、気候変動によってもたらされる危機を再認識し、誰もが、どの企業もが自分ごととして環境問題を考えるチャンスだと思っています。サステナビリティには多くの定義があります。それは生物多様性を意味し、水や空気の浄化があり、フェアトレードがあり、リサイクルがあります。どれも同様に大事ですが、二酸化炭素の削減が最も急を要する問題です。カーボンフットプリントが世界中であまりにも早く、高くなりすぎていて、いまどうにかしなければ本当に手遅れになってしまいます!

まず私たちが始めましたが、これからはあらゆる企業がつくるあらゆる製品にカーボンフットプリントが示されるようになるべきです。そうすれば、一人一人の意識も変わり、行動も変わるはず。消費者は、カーボンフットプリントを減らすための能動的な選択ができます。我々だけでなく、いまや世界的大企業のユニリーバも、ロジテックも、カーボンフットプリントを表示することを発表しています。これからは、あらゆる食品にカロリーが表示されているのと同じように、カーボンフットプリントを見て、消費者がモノを選ぶ時代になると信じています。いまはまさに、エキサイティングな変革のときなのです!


ティム・ブラウン◎ニュージーランド出身。米シンシナティ大学でデザインの学士号を、英ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスで経営学の修士号を取得する。元ニュージーランド代表のプロサッカー選手として2010年ワールドカップに出場した経歴を持つ。2015年、共同創業者のジョーイ・ズウィリンジャーとともにオールバーズを創立。エコフレンドリーで環境負荷をかけないフットウェアに加え、アパレル商品を展開する。

Allbirds(オールバーズ)
https://allbirds.jp/

Promoted by Allbirds / text by Shigekazu Ohno(lefthands)

タグ:

連載

SUSTAINABLE LIFE