ビジネス

2020.08.18

老舗企業が工場を開放 あの電動バイクを生んだ「オール和歌山」の挑戦

glafit代表の鳴海禎造氏(左)、ノーリツプレシジョン代表取締役社長の星野達也氏(右)


「星野さんの尽力のおかげで、現場のコミュニケーションがかなり加速しました。最初のころは、精緻な設計図がなければ先に進めない、古い会社にありがちな、石橋を叩いて渡る姿勢でした。しかし、連携するなかで、スピード感を持って「作りながら考える」ようになって。失敗を繰り返しながら、確かなクオリティーの製品が出来上がったと感じています」

確固たる技術を持った老舗メーカーと、柔軟な発想とスピード感を持ったスタートアップ。両者の思惑とビジョンが噛み合ったなかで生まれた新製品「X-SCOOTER LOM」は、クライドファンディングサイト「Makuake」上で史上初の2プロダクト連続で1億円越えを記録した。



次の一手は「和歌山発オープンイノベーション」の創出


社長就任から3年。glafitとのプロジェクト大成功を追い風に、ノーリツは先日、新たな挑戦をしていくと発表した。ものづくり系スタートアップが集う「和歌山インキュベーションセンター(WInC)」の設立だ。

2020年9月に開所予定のこの施設には、ノーリツに加え和歌山県庁、和歌山大学と産官学が連携。入居したものづくり系スタートアップの支援を進めていく。

「WInCは、弊社の大きな特徴である“一気通貫の生産体制”を活かした枠組みになっています。場所は弊社の4階で、入居したスタートアップは工場と直接コミュニケーションをとることができる。製品の試作はもちろん、量産体制を構築できるのが大きな強みです。一気通貫の生産体制は、需要がないかぎり、コストが嵩んでしまう構造です。これからは、glafitをはじめとしたスタートアップと組み、ポートフォリオマネジメントによって生き残るしか道はないと考えています」

引き続き提携を続けていく鳴海も、「和歌山発」の取り組みに期待を寄せている。

「試作ができても量産体制に踏み込めないのは、ものづくり系スタートアップにおいて大きなボトルネックでした。ものづくり系スタートアップにとって、ノーリツさんのアセットと技術力が広範な領域で活かせるのは、大きなメリットだと感じています」

星野は、「glafitとの提携のおかげで、フワッとしたお題を振られても形にできるようになったのは、現場のメンバーの成長ですね」と笑い、「今では、社員も新たなスタートアップと出会い、刺激をもらうことを楽しみにしています。ものづくりに都会も地方も関係ない。今後も、大きなビジョンを持ったスタートアップと、積極的に新しい取り組みを進めていきたいです」と展望を語った。

文=半蔵門太郎 写真=小田駿一

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