スマートフォンユーザーであれば、無料でアプリが利用できる代わりに、広告が表示される仕組みを理解しているだろう。多くのユーザーは、広告を邪魔に感じても、無料だから割に合っていると考えている。しかし、実際にユーザーが支払う対価はこれだけではない。貴重なバッテリー寿命を何時間分も消耗しているのだ。
広告付きアプリはCPU使用率やデータ通信量を大幅に増やし、通常のアプリに比べ、消費電力が33%も多いことが、南カリフォルニア大学とロチェスター工科大学による研究で明らかになった。このことは、データ通信量に制限があるプランのユーザーの月額料金を高くし、アプリ開発者らにとっては、自社のアプリの評価を下げることにつながる。
研究チームらは「これまで、無料アプリには全くお金が掛からないというのが基本概念だった。しかし、ユーザーは無料アプリは完全に無料ではないことを理解した上でアプリを選んで欲しい」と述べている。
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ユーザーらは、ウェブ上やアプリ内の広告をクリックすることで広告主が課金される仕組みを理解している。しかし、今回の研究結果は、広告がユーザー自身にも何らかの負担を課していることを示している。
広告付きアプリは、通常のアプリより電力を16%多く消費する。それにより、バッテリーの稼働時間が平均2.5時間から2.1時間へ短縮し、頻繁にアプリを利用した場合は、1.7時間まで短くなる。
また、メモリを22%多く使う他、CPUの使用率を56%増加させるため、データ通信量は、広告なしのアプリの最大2倍にも増加。「通信キャリアがAT&Tのユーザーの場合、1回の利用につき1.7セントの負担増になる」ということだ。
また、今回の研究はアプリ内に広告を掲載することにより、アプリの評価が5つ星方式で平均0.003下落することも示している。この値は一見小さく思えるが、実際にはアプリストアのランキングを大きく低下させるインパクトがあることも研究チームは突き止めた。
「アプリ開発者には、広告の過剰掲載が逆効果になることに気が付いて欲しい。広告収益よりも損害のほうが上回る可能性もある」と研究者らは話す。
「バッテリー寿命が短くなったり、データ通信量が増えることは、多くの人にとって苦痛だ。こうした認識が広まることで、アプリの開発者たちが、広告を過剰に掲載することに慎重になることを期待する」と研究者らは述べている。
現在、両大学の研究者らは、アプリ利用の快適さと、アプリの評価やレビューとの相関を調べる新しい技術の開発にも取り組んでいる。この技術の活用により、開発者らはアプリ内広告が多過ぎないかどうかを判断できるようになるという。
「開発者たちは、適切な広告量をまだ把握していない」と研究チームは指摘する。「最終的な結果を出すまでには、まだ時間を要するかもしれない。これは慎重に検討すべき問題だ」と、同チームは話している。