それら認識・生成など既存の技術を踏まえた上で、AIの能力をさらに拡張しようと挑戦する日本企業がある。三井物産、伊藤忠商事、丸紅など国内大手商社が株主として参画するAI企業・GRIDだ。同社では、人間に最も理想的な答えを提案する「予測・最適化AI」の開発に注力している。一体どういうことか。代表を務める曽我部完氏は言う。
「人間がAIに期待していることは、認識能力などのさらに先にある『未来がどうなるか示すこと』、もしくは『一定の事柄や条件に対して最適な答えを提示する能力』だと考えています。我々はそのような課題設定のもと、予測および予測の先でどのような行動を人間が選択すれば良いかを提案する『予測・最適化AI』の開発に注力しています」
GRIDが予測・最適化AIを実用化しようとしているフィールドは、エネルギー関連施設、物流、サプライチェーンなど、社会の礎となるインフラ分野である。6月末には、出光興産と共同で、石油を運ぶ輸送船(=油槽船)の「配船計画の最適化」に関する実証実験(第一段階)も完了させている。これは、従来、熟練担当者の能力に依存しがちで、長時間の作業が不可避だった配船計画の立案を、予測・最適化AIで代替するという実験だ。結果、計画立案時間を約60分の1、輸送効率を20%と大幅に削減することに成功した。
グラフ出典:株式会社グリッド(2020.06.30 同社リリース)より
具体的な金額規模としてはまだ「算定中」(出光側)だそうだが、削減される輸送船の燃料費なども含めると、相当な規模のコストが削減される見通しだ。なおGRIDは現在、出光興産だけでなく、「電力、製造業などクラインアント7社と予測・最適化AIおよびソリューションを実証中」(広報担当者)だとしている。