イスラエルでも始動の「下水からのコロナ検出」、各国に拡大中

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新型コロナウイルスの感染拡大が世界で続く中、各国の保健当局が新たな検査手段として期待を寄せるのが、下水の分析による感染動向の把握だ。研究者によると人糞内からウイルスのRNAを検出することが可能であり、下水管の内部を調べることでウイルスの存在を検知できるという。

下水を通じた感染動向の把握は既にオランダやイタリア、スペイン、オーストラリア、フランスに加え、米国のコネチカット州やマサチューセッツ州でも行われている。

この分野のスタートアップ企業としては、米国のバイオボット・アナリティクス(Biobot Analytics)が知られている。

また、米国とイスラエルを拠点とするKandoもテクニオン・イスラエル工科大学やベングリオン・ネゲブ大学、イスラエル保健省と共同でイスラエルの都市アシュケロンで試験プログラムを開始した。

Kandoは2011年から下水の分析による環境汚染の調査を行っていた。同社のCEOのアリ・ゴールドファーブ(Ari Goldfarb)は「当社は都市の下水管に設置されたセンサーのネットワークを用い、新型コロナウイルスの追跡を行っている」と述べた。

「Kandoは独自のアルゴリズムやAI(人工知能)を活用した分析を通じ、新型コロナウイルスのRNAの残存物を確認し、感染の発生地域を特定する。当社のシステムであれば、データの精査を通じ、ホットスポットを詳細に突き止めることが可能だ」とゴールドファーブは述べている。

Kandoのデータを用いれば、感染が他の地域に拡大する前に効率的な隔離が可能になる。現地メディアのThe Times of Israelによると、Kandoのチームは研究者たちとのコラボを通じ、イスラエルの都市部で当初の予想を上回るレベルの感染状況を確認したという。

ゴールドファーブによると、Kandoのテクノロジーであれば感染者が宿泊したホテルなど、特定の建物での感染動向も把握可能だという。また、状況をほぼリアルタイムで把握可能で、当局がアラートを発することも可能になるという。

The Times of Israelの記事によると、Kandoは同社のAIを活用したIoTシステムの活用を、他のイスラエルの都市にも拡大する計画という。米国のバイオボット・アナリティクスも同社のテクノロジーを、各州に広げようとしている。

同様な検査システムは英国においても開発中で、間もなく全国レベルのテストが実施される予定だ。下水を通じた新型コロナウイルスの感染動向の把握は、個人のプライバシー侵害のリスクを比較的低く抑えられる点もメリットとされている。

編集=上田裕資

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