パンデミックからの回復は、気候変動の「ワクチン」になるか

南カリフォルニアではロックダウン中に大気の質の改善した(Getty Images)

新型コロナウイルスによるロックダウンで多くの地域の大気汚染が軽減されたことが報告されています。このような利点を継続することは可能なのでしょうか。ポストコロナの時代に取り組むべき気候変動対策について、世界経済フォーラムのアジェンダからご紹介します。


・パンデミック(世界的大流行)が環境にもたらした恩恵は、私たちに何ができるかを示しています。
・私たちの今の行動、または行動しないことが、これから何世代にもわたる人間のあり方を決定していくのです。
・私たちが必要とする未来を構築するために、政策立案者や意思決定者が注目すべき点は以下の通りです。

新型コロナウイルスの感染拡大は、単に予測可能な危機であっただけではなく、実際に予測されていました。世界保健機関(WHO)などによるパンデミックへの備えと対応に関する公式ガイドラインの数々を見ると、脅威がどれほど深刻に受け止められていたかが明らかになります。現在、他のどの国よりもはるかに多くの感染者と死者を出しているアメリカでは、オバマ政権が次期政権のために69ページに及ぶパンデミックの「ゲームプラン」を作成していましたが、これが使用されることはありませんでした。一方、世界的なパンデミックについての想像は何十年にもわたってフィクションで描かれ、人々の意識の中で繰り広げられてきました。

このような警告があったにもかかわらず、新型コロナウイルス感染拡大による危機への備えと当初の管理に大きな失敗があったことは、許容できるものではないとしても、理解することはできます。その理由としては、特定の年にパンデミックが発生する可能性が低いこと、リスクと機会がせめぎ合っていること、緊迫した初期の段階ではデータが限定され、不確実であったことなどが挙げられます。

新型コロナウイルスの感染拡大を制圧し、収束させるための道は危険で、難しい選択が数多くあるものの、希望の兆候もあります。グラフの曲線を平坦にして、場合によってはウイルスの根絶に向けて歩みを進めることが可能であることが各国で証明されています。人類は力を結集し、創意工夫を生かして突破するでしょう。しかし、それには途方もない困難が伴います。

しかしながら、新型コロナウイルス感染拡大について最も懸念されるのは、ウイルスそのものではなく、それがこれから起きることの前兆であるのではないかという点です。人間が作り出した難問である気候変動は、現代の最悪の危機になる兆しを見せています。私たちが集団的な脆弱性とそれに応じて行動する責任を正しく認識しないようであれば、その結果は何千年にもわたって人類の生活と文明のあり方を決定づけることになるでしょう。
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文=María Mendiluce CEO, We Mean Business; Jose Siri Senior Lead, Science, Cities, Urbanization, and Health, Our Planet, Our Health (OPOH), Wellcome Trust

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