パンデミックからの回復は、気候変動の「ワクチン」になるか

南カリフォルニアではロックダウン中に大気の質の改善した(Getty Images)


ポストコロナの時代にすべき3つの取り組み


新型コロナウイルス感染拡大は、痛烈な痛みを伴うものですが、このおかげで、半年前には想像もできなかった気候変動対策のための政策的な窓が作られたのです。来年には、復興計画、景気刺激策、企業救済に何兆ドルもの資金が投入されるでしょう。この歴史的瞬間に、各国政府は、気候変動を含むシステミックリスクを防止する技術に投資し、排出量を大幅に削減し、社会的レジリエンス(適応、回復できる力)を向上させることで、未来の方向性を変えることができます。

企業は、革新的な能力、解決策へのフォーカスや財務的洞察力をこの問題に適用することで、重要な役割を果たさなければなりません。今日私たちが直面している劇的な人間的・経済的状況が繰り返されないようにするには、政府、企業、社会が協力し、以下の取り組みを実施する必要があります。

1. 科学に基づいたネットゼロエミッション戦略を採用する。企業も政府も、2050年までに温室効果ガス実質排出量をゼロにするための、明確な科学的根拠に基づいた道筋を採用することで、健康リスクと気候リスクに対処することができます。その過程で、100%クリーンなエネルギーシステムを構築し、炭素排出がないモビリティへの移行を加速させ、将来のゼロカーボン重工業を構築し、自然を活用した気候変動対策の可能性を活用することができます。気候危機への取り組みに加えて、これらの道筋はまっとうな雇用を生み出し、健康と福祉を守ることにもつながります。新型コロナウイルス感染拡大に伴う経済刺激はこのような道筋を整備することに専念すべきです。

2. 現在と将来の健康リスクをこれまで以上に考慮し、対処する。地球規模の健康安全保障の枠組みは、気候変動に起因するものも含め、あらゆる危険が網羅されていなければなりません。これらのリスクに備えて対処するためには、世界のすべての国とすべての利害関係者の領域にまたがるグローバルな脅威に対して、共同体として責任を持って計画と予防策を実施することが必要となります。

3. より良い生活のために都市を再設計する。新型コロナウイルスの感染拡大は、私たちの都市や都会的な生活様式に非常に多く蔓延している、深い脆弱性と不公平を浮き彫りにしました。ポストコロナの時代には、都市の設計・計画・管理、そして、都市のシステムと人間の関係を再考する必要があります。新型コロナウイルスの感染拡大に対応した刺激策は、以前よりも健康にいい空気やモビリティ、仕事や遊びなどを促進するものでなければなりません。また、刺激策はすべての市民が安全と機会を享受できるような都市に至る道筋を示し、健康を都市生活の中心に据えるものである必要があります。

アメリカの哲学者・詩人である、ジョージ・サンタヤーナ氏の言葉を借りると、私たちが現在の教訓を認識し、覚えておくことができれば、問答無用で現在と同じことが繰り返されることはないのです。つまり、すべきことは明確です。私たちは、科学を無視すること、眼をそらすことをやめなければなりません。私たちにはより健康的な生活を取り戻す責任があり、そしてそれを取り戻すことは明日のため、引いては未来のためとなるのです。


(この記事は、世界経済フォーラムのAgendaから転載したものです)

連載:世界が直面する課題の解決方法
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文=María Mendiluce CEO, We Mean Business; Jose Siri Senior Lead, Science, Cities, Urbanization, and Health, Our Planet, Our Health (OPOH), Wellcome Trust

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