歴史ある温泉文化を持つこの土地の持つ可能性に、グローバルブランドからの視線が向けられた。別府の街を見下ろす鶴見山麓に位置する明礬エリアに、今年ホテルを開業させたのが「ANAインターコンチネンタル別府リゾート&スパ」だ。
89室というインターコンチネンタルとしては小ぶりなサイズが、グローバルブランドのホテルでありながら、洗練されたラグジュアリーリゾートを感じさせる絶妙なバランスを保つ。館内はスタイルの異なる2つのレストラン、別府市街を見下ろすインフィニティプール、ライブラリースペースやスパなど、充実した施設を誇り、連泊での滞在を楽しみたいホテルだ。
ときに雲海に覆われることもある風光明媚な鶴見山麓。水面が刻々と別府の空を映し出す
すでに世界約60カ国で展開するホテルブランド、インターコンチネンタルだが、意外にもスパリゾートへの進出は別府が初だという。
「ワールドクラスのホテル施設とサービスを、温泉という観光資源と組み合わせることで、我々は新しいエクスペリエンスを提供することができます。別府は海と山に囲まれた世界有数の温泉地。それだけでもすでに大きなコンテンツですが、それ以外にも食や工芸の豊かな文化もあります。本州や近隣のアジア諸国からのアクセスの良さも魅力です」と語るのはハンス・ハイリガーズCEO。
ハンス・ハイリガーズ◎インターコンチネンタルホテルズグループ(IHG(R))/ IHG・ANA・ホテルズグループジャパンCEO。ドバイのジュメイラグループ、パン・パシフィック・ホテルズ・グループ等で総支配人等を歴任。2014年よりIHG・ANA・ホテルズグループジャパンに参画、16年1月より現職
別府の文化的な側面に触れるのが、ステファン・マッサリーニ総支配人だ。
「別府は国東半島アートフェスティバル、城島ジャズインなど文化的な活動がされてきた土地。ローカルのクリエイターとの協業もこのホテルが目指したところです」
土地へのリスペクトは至るところに感じられる。エントランスで目に入るのは、天に昇る雲龍をイメージした迫力ある別府の竹工芸や、別府石を積み上げた石壁。そしてインフィニティプールや露天風呂も自然と街に目を向けさせるようにデザインされている。
別府湾や市街を一望できる絶景に位置する、野趣あふれる露天風呂。別府八湯のなかでも「美肌の湯」として知られる明礬の湯を堪能できる
また館内にはあらゆる場所に竹のオブジェがあるが、これには現代作家のみならず、伝統工芸士や地元の協同組合との協業があったという。
土地の魅力を生かしながらこの内観を作り上げたのは、国内外で活躍する有名デザイナーの橋本夕紀夫氏。周りの風景と調和する素材選びや加工により、最新鋭のホテルでありながら、森の延長線上にいるような居心地のよさを作り上げている。
土地の利を生かしているのは、内装だけではない。地産のものを洗練されたスタイルで提供する料理や、地の焼酎やかぼすを使ったバーテンダーのカクテル、そしてゲスト・エクスペリエンス・アンバサダーは、別府の伝統工芸や土地についての魅力を余すことなく伝えてくれる。
「世界100カ国に広がるIHGネットワークを通じ、世界に別府の素晴らしさを伝えていきたい」とハンスCEOが語るように、ここは多くのゲストにとって別府の良さを再発見できる場所となるはずだ。
天井まで広がる窓から望む山脈を背景に、森に見立てられた柱や別府石で装飾されたダイナミックな空間がゲストを出迎える