4. サプライチェーンの混乱は開発途上国の経済発展を妨げる可能性がある
これまでも貿易紛争や技術標準をめぐる緊張は、国際貿易における不確実性を生んできましたが、パンデミックはそれに拍車をかけています。ロックダウンによる貿易の物理的な減少は一時的なものかもしれませんが、企業が重要な部品を自国に持ち帰ったり、並行して複数の国から調達を行うことで、サプライチェーンのレジリエンス(適応、回復できる力)を高めようとしたりすることは、開発途上国にマイナスの影響をもたらす可能性があります。
多国籍企業などが自給自足率を高める動きは、高所得国と低所得国との間の貿易関係を長期的に損なう恐れがあります。企業がレジリエンスのために効率性を棄てる準備ができているのかどうか、本報告書はまだわからないとしていますが、パンデミック、地政学的緊張、気候変動関連の出来事に関する不確実性は、サプライチェーンのさらなる混乱を招きかねません。
回答者によれば、サプライチェーンの変革が国際経済の収束から逆戻りを引き起こす「可能性は高い」といいます。これにより、開発途上国はその経済成長モデルを再考することを余儀なくされるでしょう。
しかし、新興市場にとってチャンスのひとつは、テレワークが世界的に受け入れられるようになったことです。それは、各国が価格競争力のあるサービスを提供し、新しい経済開発モデルを考案することができるようになったということ。そうなれば、ヒューマンキャピタル(人的資本)にさらなる投資が集まるようになります。
5. 適切な行動により、新しい成長市場が出現する可能性がある
この危機は、長期的な経済発展において、世界的統合に続く鍵となるイノベーションにも影響を与えるとみられています。
パンデミックの影響を克服し、不平等と気候危機に対処していくためには、イノベーションが欠かせません。しかし、景気後退が研究開発資源を脅かしている中、イノベーションにも影響が及ぶことが考えられます。
政府は、強力なイノベーションと投資戦略があれば、経済発展を正しい軌道に乗せることができるでしょう。しかし、それにはすべての分野にわたる根底からの改革が必要になります。そしてそれは、公的機関と民間が連携し、政府が既存の分野の再構築と新市場の構築に積極的に関与しようとする場合にのみ実現できるものなのです。
本報告書では、グリーンエネルギーからサーキュラー・エコノミー、健康、教育、介護に至るまで、新しいフロンティア市場は、経済や社会に変革をもたらす可能性があるとされています。
本報告書はまた、今日の社会は、より包摂的でグリーン(環境に配慮した)な道へと進むための、唯一無二の機会を手にしているとも強調します。
(この記事は、世界経済フォーラムのAgendaから転載したものです)
連載:世界が直面する課題の解決方法
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