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2020.08.19 08:30

チーフエコノミストの世界経済の見方 コロナ危機から復興に向かう5つの指針


金融市場は、個人消費と工業生産の回復の兆しに後押しされてきましたが、どちらも過去のレベルには遠く及ばない上、新たなロックダウンの波が回復を妨げる恐れもあります。さらに、企業が利益を守るため労働力の縮小や投資の削減をしていることが、2021年に失業の増加、イノベーションの減少、個人消費の減少を招きかねないということを、市場は十分に理解していない可能性もあります。

労働に関する見通しは、全体的に不確実性が非常に高いままです。しかし、アメリカにおける失業率の低下が予想以上にゆっくりと進展していること、ヨーロッパにおける雇用保護措置が夏に縮小されることから、失業率はますます悪化するかもしれません。

2. 私たちは、不平等に取り組むための唯一無二の機会を手にしている


技術変化と世界的統合が生み出す利益が均等に配分されていないことにより、近年、不平等が加速しています。最も脆弱な人々へ不均衡に影響をもたらした、新型コロナウイルスの感染拡大は、この傾向をさらに後押ししています。重要なのは、今後、財政負担をどう分担していくかということです。

しかし、すべての混乱の中に新しい機会をもたらしているのもまた、パンデミックそのものなのです。「チーフエコノミスト・アウトルック」でも述べられているように、この危機によって負った傷は、広範囲に及ぶシステミックな変革を実現する絶好の機会を生み出しました。それは、不平等のスパイラルが制御不能に陥ることを防ぐ、唯一無二の機会となったのです。

これには、各国政府の働きも関係します。他の項目と同じく、不平等を監視し、将来起こりうる万が一の危機に備えた社会的保護措置を改善し、ニューエコノミーにおけるソーシャルモビリティ開発を支援することも含まれるのです。調査に協力したチーフエコノミストの半数強は、ユニバーサル・ベーシックインカムなどの無条件の基礎的給付が、危機後の政策ツールキットの一つになると回答しています。

3. 税の見直しは政府への国民の信頼構築に役立つ可能性がある


パンデミックにより加速した不平等に対処する上で、チーフエコノミストたちは、税の役割が大きいことについても強く同意しました。脱税を抑制するための継続的な取り組み、デジタル活動に公正に課税するための国際協定の採択、富裕税と限界所得税増額の再考を含む税制構造の改革は、緊急の要件と考えられています。

景気回復の過程で政府の支援措置により蓄積され、右肩上がりとなっている債務残高の完済方法に関して厳しい選択を迫られる中、政府にとっては大きな機会が訪れています。市民は、経済的に前進する機会の減少に長年耐えてきました。その信頼を取り戻すための、大きな機会です。

「新型コロナウイルス感染拡大による負債が、富裕税や企業のタックスヘイブンの世界的な取り締まりによって返済できれば、その世界では、福祉手当が削減され、付加価値税が引き上げられる世界とは全く違ったものに見えることでしょう」と、アダム・トゥーズ氏は述べています。
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文=David Elliott, Senior Writer, Formative Content

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