ライフスタイル

2020.09.12 11:00

スウェーデン在住の日本人が帰国して感じる「11の至福」|前編


4. 中華料理店の回転円卓


次々と小皿料理が出てきて、二人連れでも色々な味をバランスよく楽しむことができる居酒屋。中央の回転円卓をぐるぐる回しながらみんなでコースをシェアする中華料理店は、実はもともと中国にはなく、日本(目黒雅叙園)が発祥のようだ。

残念ながらスウェーデンにはそういう形式のレストランがない。こちらのレストランは一人一皿を注文するもので、皆で取り分けたりはしない。中華でさえ、一人はひたすら肉と野菜の炒め物だけを食べ、もう一人はひたすら焼きそばだけを食べる。日本のようにちょこっと横にスープやサラダがついてくるわけでもない。「ちょっと味見してみる?」というコミュニケーションもない。

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スウェーデンの一人一皿の中華料理(写真提供:久山氏)

そもそも「料理をシェアして割り勘する」という感覚がない。

以前スウェーデン人の上司と一緒に日本に出張し、居酒屋で食事をしたことがあった。隣のテーブルに、会社の飲み会らしき10人くらいのグループが座っていた。そこに次々と大皿料理が運ばれてきて、手際よく小皿に取り分けられていく。上司はそれをとても不思議そうな顔でまじまじと眺めていたが、そのあとわたしに質問を浴びせかけた。

「あんな風に食べたら、誰がいくら払えばいいのかわからないんじゃない?」「最後にみんなで割り勘するんだよ。もしくは最初からコース一人3000円というふうに決まってる」「ええっ!? それって不公平じゃない? 人によって食べる量も違うし、嫌いな物もあるだろうし」。

そう言われてみればそうだ。わたしはなんと説明していいかわからなかった。とはいえ、自分自身は今まで「不公平だ」と思ったことはない。こういう場では、大食いの人でも皆と同じ量に抑えるというマナーを無意識に守っているのではないだろうか。嫌いなものといってもピンポイントで「ニンジン」とか「トマト」くらいの人がいいから、それだけよければいい話だ。

しかしよく考えてみると、スウェーデン人は食べ物の好き嫌いがはっきりしている人が多く、この上司も「魚全般、苦手」だ。それに加えてヴィーガンの人もアレルギーをもつ人も増えているし、グループの全員が満足するメニューを探すのは至難の業かもしれない。

5. 水族館・動物園


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日本の水族館。写真は八景島シーパラダイス。(Getty Images)

子どもが小さかった頃は、日本に帰るたびにあちこちの水族館や動物園に行ったものだ。海遊館ほどの規模のものは世界でも珍しいし、「白浜アドベンチャーワールド」のように近距離で世界中の動物を観察したり、自分の手でゾウやキリンに餌をあげられるという機会は一生のうち滅多にない。

ただ、スウェーデンではこういうテーマパークは絶対にありえないと思う。人間だけでなく動物の権利もしっかり守られているからだ。動物園はいくつかあるが、人間と近すぎると動物のストレスになるので、遠目に眺めるにとどまってしまう。
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文・写真提供=久山葉子 編集=石井節子

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