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電通総研内のクリエイティブシンクタンクによる連載「NEW CONCEPT採集」


ストーリートとビジネス


「ストーリート」はパブリックスペースだけでなく、オフィスやコワーキングスペースなどビジネスの現場でよりよいコミュニケーションを生む可能性を秘めている。リモートワークも徐々に普及しつつある一方、リアルでの偶然的なコミュニケーションが生まれる「ストーリート」の重要性は増している。

例えば、有明にあるファーストリテイリングの本部オフィス「ユニクロ・シティ・トウキョウ」では、真ん中に190mの曲がりくねった長い道が横断していて、その道沿いにさまざまなスペースがあふれ出るように配置されている。部署を横断した社員同士の偶然的な出会いを増やし、コミュニケーションを生むために道はあえて真っすぐではない。すべてをつなげる道がストーリートになり、そこで起きるコミュニケーションが企業の新しい物語を生んでいる。


ユニクロ社員1000人が16500平方メートルのワンフロアに集まる、まるで街のようなオフィス

ストーリート作りは、活用されていない空間を見つけるところから始められる。例えばオフィスならレイアウトを変えるだけでデスクとデスクの間は道になるし、駅前広場ならベンチや植栽などで広い空間を区切って小さい道を作ることができる。

偶然の出会いやコミュニケーションを生むために、道を曲げたり交差点を作ったり、角に本棚や植栽などを置いて見通しを悪くするのもいい。道を一から作らなくても、オフィスの廊下や商店街など、すでに存在する「単なる動線」をストーリートにしてしまうのも手だろう。そして何より重要なのは、道ができたら、そこを自分のものにすること。

私が建築学生のころ、渋谷の路上に机と椅子を置いて、自分のための作業スペースを勝手に作り、その様子を観察するというリサーチを行ったことがあった。そのとき、用事があって机と椅子を放置したまま少しその場を離れたのだが、録画していた定点カメラの映像をあとで見返してみると、そこにはまったく知らない人たちが、友達と話している様子や休憩のためわがもの顔でその場所を占領している風景が映っていた。さっきまで自分の場所だったのに、すっかりその人たちの場所になってしまっていたのだ。


自分が置いた椅子と机でお茶をする見ず知らずの人。ゲリラ的カフェテラスとして使われた

このように、道を自分のものにする人が増えてさまざまな使われ方が連鎖していくと、その場所の物語はドライブしていくようになる。そうしたら絶対に、いまより面白いコミュニケーションが生まれる場所になっていくはず。それをひたすら繰り返すだけで、ストーリートはどこまでも延び続けていくだろう。

街は次々と均質化され、同じような空間が増えていく昨今、やはりその場所、その人たちにしか生めない物語に僕らはどうしても期待してしまうのだ。


電通Bチーム◎2014年に秘密裏に始まった知る人ぞ知るクリエーティブチーム。社内外の特任リサーチャー50人が自分のB面を活用し、1人1ジャンルを常にリサーチ。社会を変える各種プロジェクトのみを支援している。平均年齢36歳。合言葉は「好奇心ファースト」。

高橋窓太郎
◎プランナー。パブリックスペース担当。建築デザインチーム、デリシャスカンパニーを立ち上げ、映画館だった空き家を改修した「元映画館」の運営などを行っている。

文=高橋窓太郎 イラストレーション=尾黒ケンジ

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