最少限の言葉で最大限に。編集者に学ぶ「価値を増やす4原則」

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減らしながら、価値を増やす


ツイッター共同創業者のジャック・ドーシーは、たぐいまれなエッセンシャル思考の経営者だ。ディナーに同席したとき、彼はCEOの役割を「最高“編集”責任者」と定義していた。別のスタンフォード大学のイベントでは、次のように説明している。

「なぜ編集かというと、日々やることは山ほどありますよね。でもそのなかで、本当に重要なのは1つか2つ。エンジニアやサポート担当やデザイナーは次から次へとアイデアを持ちかけてきますが……編集者である自分は、そういう情報のなかから1つのこと、あるいは2つか3つの要素の交点を見つけ出し、それだけを実行すると決めるのです」

ただノーと言うだけなら、3歳児にもできる。編集の技術は、ただ減らすことにあるのではない。減らしながら、価値を増やすのだ。すぐれた編集技師は、余分なものを削ることによって、そのプロットや世界観やキャラクターをいっそう際立たせる。

同じように、自分の仕事や生き方を編集すれば、その成果をよりいっそう高めることができる。本当に重要なことにエネルギーを集中できるからだ。余分なものを削ってこそ、重要なものを生かす余地が生まれる。編集は、邪魔なものを削ることによって、エッセンシャル思考の苦労を取り除いてくれる。ある書籍編集者はこう語った。

「僕の仕事は、できるだけ読者にラクをさせることです。その本から得られる情報やメッセージを、間違えようがないほど明確にするんです」

もちろん、編集にはトレードオフがつきものだ。すべてのキャラクターやエピソードを残したいと思う気持ちに反して、編集者はこう問いかける。

「このキャラクターやエピソードは、本当に作品を良くするだろうか?」

本の著者や映画の脚本家は、自分が書いたものに強い愛着がある。自分が長い時間をかけて必死で書き上げたものを、少しでも削るのは心が痛む。それでも、削らなければ本質は見えてこない。作家のスティーブン・キングもこう述べている。

「大好きなものを殺すんだ。書き手のちっぽけなエゴに満ちた胸がはりさけたとしても。大好きなものを殺すんだ」

編集の4原則を知る


もちろん、仕事や生き方を編集するのは、映画や本を編集するより少々やっかいだ。時間をさかのぼって自分のセリフを書き直すことはできないし、終わった会議やプレゼンをなかったことにすることはできない。

それでも、編集の4つの原則を知っておけば、人生は今よりずっとクリアになる。
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