最少限の言葉で最大限に。編集者に学ぶ「価値を増やす4原則」

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余計なことばかり話してしまって、話の本質が伝わらない、という人は多い。だが、話す言葉はもちろん、人生におけるすべての物事において、最大限の力を発揮したいなら最小限に“編集”し“凝縮”することが必要だというのは、ベストセラー『エッセンシャル思考』著者のグレッグ・マキューンだ。

シリコンバレーのコンサルティング会社「THIS Inc.」CEOとして、エッセンシャル思考の生き方とリーダーシップを広めるべく世界中で講演、執筆をおこなってきた彼に、「編集の4つの原則」を聞いた。


編集は、エッセンシャル思考の技術だ


毎年アカデミー賞の季節になると、人びとは作品賞の予想で盛り上がる。マスコミが特集を組み、みんな興奮して夜中まで見守っている。

一方、作品賞の陰に隠れて、あまり目立たない賞もある。「アカデミー編集賞」だ。編集賞の発表時間になると、たいていの視聴者はチャンネルを替えたり、台所にポップコーンのおかわりをとりに行ったりしている。

だが実を言うと、作品賞と編集賞には密接なつながりがある。1981年以来、作品賞をとった作品はほぼ例外なく編集賞にもノミネートされているのだ。実際、編集賞と両方ノミネートされている場合、3分の2は作品賞を獲得しているほどである。

アカデミー賞の歴史のなかでもっとも尊敬されている(有名かどうかは別として)編集技師は、マイケル・カーンという人物だ。過去8回のノミネートという史上最多記録を持ち、受賞数も3回に上っている。

カーンの顔や名前を知らない人でも、彼の手がけた映画は知っているはずだ。『レイダース/失われたアーク《聖櫃》』『プライベート・ライアン』『シンドラーのリスト』など、数々の超有名作品を編集してきた。スティーブン・スピルバーグ監督作品はほとんどすべてカーンが編集しており、スピルバーグの右腕とも呼べる存在となっている。

それなのに、カーンの名前を知っている人はあまりに少ない。編集の仕事が「目に見えないアート」と呼ばれる所以だろう。

編集は、「エッセンシャル思考」の技術である。不要なものや余分なものを容赦なく削り、作品の本質を取り出す仕事だ。では、どうすればすぐれた編集技師を見分けられるのか? アカデミー賞の選考をおこなう映画芸術科学アカデミーは、「見せられたものを見ないために懸命に努力する」のだと言う。

言い換えれば、すぐれた編集技師は、重要なものがいやでも目に入ってくるようにするのだ。余分なものを排して、見るべき要素だけを観客に提示するのである。

意味のある全体像ができあがったら、次のプロセスは余分なものをすべて切り捨てることだ。すぐれた編集技師になって、自分の仕事や生き方を完璧に編集しよう。
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