今夏はエコな国内旅行が人気 自分を見つめ直すイタリア流ヴァカンツァ

マスクをしたままビーチに腰掛ける人。ローマ近郊のオスティアで(Getty Images)


例年と同様、長期休暇を取るイタリア人の大多数は海や山にある別荘を訪れるか、親戚や友人の家に滞在するが、今年はワーケーションを兼ねて自宅より快適な大きな庭やプールを有する別荘を賃貸する長期滞在型も多い。マスクをつけず思い切りくつろげて、値段も1泊100ユーロ〜150ユーロ程度とホテルより割安だ。

このほか、面白い傾向としては、より自然との一体感を感じられるキャンプ場が大盛況なことだ。例年だとドイツやオランダなどの外国人ファミリーで賑わうキャンプ場がイタリア人で埋まっている。手軽なハイキングや郊外のウォーキングツアーをはじめ、庭でバーベキューを楽しんだり、テントを張ったりと自宅でキャンプ気分を味わうというのも流行っている。

イタリアの大手スーパーのデジタルチラシサービスTiendeo.itの購買調査ではバーベキューの検索が7割も昨年の同時期より増えたそうだ。世界的な画像ブックマークサービスPintrestが発行するトレンド調査 「Pintrest 100」でも「エコサステナブル旅行」に関連する検索が全体で253%増加していることや、キャンプに関する検索が10倍以上も伸びていることから、自然回帰の旅とキャンプブームは、イタリアのみならず世界的なトレンドと言えるだろう。

ローマ コロッセオ周辺の観光客
ローマのコロッセオ周辺で自転車に乗って回る観光客。2020年7月31日に撮影 (Getty Images)

イタリアの新たな夏休みの過ごし方:リトリート型の旅


頭と心を空っぽにして自分を見つめ直すのがイタリア流の夏休みだが、凄惨なコロナ禍のロックダウンの日々から再び立ち上がるには、もっと深い癒しや回復のレクリエーション(再び創ること)が必要なのかもしれない。精神的なケアや自己研鑽を目的とする旅を「リトリート」というが、イタリア各地にヨガ、瞑想、巡礼など自分の内なる静けさと対峙するような時間を過ごすリトリート型のプログラムが広がっている。

凄惨なコロナ禍のロックダウンの日々の中で心の平安と静けさを求め、ヨガや瞑想、そして巡礼などはイタリアのニューノーマルとして定着し、今後は旅の新たな目的となりそうだ。
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文=齋藤由佳子(Forbes JAPAN オフィシャルコラムニスト)

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