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イノベーションの舞台裏


「泰蔵さんのおかげで、プランターという形に執着せず、『どんな世界を理想として、どう社会をデザインしていきたいのか』ということを軸に据えて、事業戦略を立て直せたのです。その結果として、いまのgrowの構想ができあがりました。

あのアドバイスがなかったら、ハードウェアスタートアップとしてプロダクトを出して数台売って終わり……みたいな結末を迎えていたかもしれません。本当に感謝しています」

誰もが種をまき、みんなで育てる社会を目指して


これからプランティオが目指す世界観を尋ねてみると、芹澤氏は「誰もが種をまき、みんなで育てる“共給共足”の社会」をつくりたいと表現した。

「SDGsや循環型社会など、これから目指すべき社会の方向性を示す言葉は、たくさん転がっています。けれど、実際そうした言葉を聞いても、多くの人たちは何をしたらいいのか、ピンとこないと思うんですよね。

だから、私たちは身近で簡単に始められる行動変容を促していきたい。それが『種をまこう』『みんなで育てよう』のふたつであり、そのためにもIoT/AIを搭載したアグリセンサーgrow CONNECTとIoT/AI搭載のコミュニティ農園のgrow FIELDを全国で広めていきたいと考えています」

4月にリリースしたウェブサービス『grow SHARE』は、ベランダ菜園からコミュニティファームまで、街中にある野菜を育てる場所を『vege SPOT(ベジスポット)』としてマップ上に登録することができる。

栽培に関する情報交換やボランティア募集、野菜のおすそ分けなど、コミュニケーションのハブになることで、農による人々の繋がりを促進し、地域社会にアグリカルチャーを浸透させることが狙いだ。

アグリセンサーが普及することで、ヒートアイランド現象にどれだけ貢献しているか、Co2削減にどれだけ貢献しているかなどソーシャルグッドなインパクトも可視化さるという。

「コロナの影響が収束した後には、大型商業施設や大手カフェチェーンなどとの提携を予定しています。こうして皆さんが通いやすい場所に、気軽に農に触れられるポイントとしてgrow FIELDを地道に増やしていきたいと考えています。

ロンドンではすでに、2800箇所以上もの都市農園があって、地域住民たちがそこで協力して野菜を育てているんです。『野菜は買うものではなく、つくるものだ』という価値観が、少しずつ根付いてきているようです。

日本でも、このような流れは必ず訪れるでしょう。私たちは既存の農業一択という現状から脱却し、自分の生に向き合うべく、食と農を取り戻していく必要がある。祖父の想いを受け継ぎ、プランティオの事業を通じて、人と人、人と自然との繋がりを豊かにしていくことが、自分の天命だと思っています」

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都市部でも街中に自然、農園があふれる未来は決して夢物語ではないと、芹澤氏は断言する。

芹澤 孝悦 (せりざわ たかよし)◎ エンターテインメント系コンテンツプロデューサーを経て日本で初めて“プランター”という和製英語を発案・開発し世に広めた家業であるセロン工業へ。2015年、元祖プランターを再定義・再発明すべくプランティオ株式会社を創業。しかし祖父の発明の本質は高性能なプランターを開発した事ではなくアグリカルチャーに触れる機会を創出した事と捉え2020年“grow”ブランドを発足、食と農の民主化を目指す。

取材・文=西山武志、森ユースケ 撮影=杉原洋平

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