ビジネス

2020.08.18

日本初のプランターを発明した企業の三代目が目指す「食と農の未来」

畑に刺さっているgrow CONNECTのプロトタイプ。このセンサーがアプリを通じ通知をする仕組みだ。


プランティオは、このハードウェアを使ったIoT/AI搭載コミュニティ農園「grow FIELD」も運営中だ。現在は渋谷区恵比寿、神泉、日本橋浜町の3箇所がオープンしている。

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恵比寿プライムスクエアプラザの屋上にあるgrow FIELD。Wi-Fiもつながるので、休憩やミーティングをすることも可能だ。

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日本橋浜町にOPENしたgrow FIELD TOKYO MIDORI Labo.

「都心のビルの屋上にgrow FIELDというアグリカルチャーに触れられるタッチポイントをつくり、サブスクリプション型のシェアファームとして運営しています。現在はコロナウイルスの影響で多くの人を呼び込むのが難しいですが、事態の収束後に向けて、ここで収穫した野菜を付近のレストランで料理してもらうなど、いろんな楽しみ方ができる仕組みを準備しています。

仕事帰りや休日のレクリエーション、会社の部活動など、多岐にわたる使い方をしていただけるよう、各所との連携を模索しています」

農にまつわる大切な文化を取り戻すために


こういったgrowの普及を通じて、食と農をライフスタイルの中心に取り戻していく。これまでに手放してしまった農にまつわる大切な文化を含め、再度、自分たちの手にしようというのだ。

「英語で“農”を意味するアグリカルチャー(aguricuture)は、ラテン語の(agri=畑)と(culture=耕す)を合わせた言葉です。つまり、農という言葉には本来、地域を結束させるためのお祭りや、七十二候などの風土に合わせた季節の分け方、地域ごとの食べ物の保存法といった、さまざまな文化をも含む言葉でした。

しかし、現在は農業という、工業だけを切り出した言葉を使い、カルチャーの部分をすべて切り離してしまったことで、消えつつある文化がたくさんある。

そんな大切な文化を取り戻す第一歩として、なにができるか。それは、人々が自ら種を植えることだと思っています」

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芹澤氏は、このことを「食の生産のデモクラシー、“生きること”の民主化だ」と、表現する。

「食と農が生活の中心になれば、あらゆる社会問題が解決するのではないか? 私は本気でそう思っているんです。現代にはびこるさまざまな社会課題の根底には、人々の不安が渦巻いています。そのような中で、『もし明日仕事やお金がなくなっても、食べる物はあるし、ご近所さんも頼れるから、なんとかなるだろう』と思えることが、どれほど心強いことか。

身近に自給自足できる社会システムがあれば、人々は心穏やかに助け合えるようになるはずです。農という営み自体が、身近な人との助け合いの上に成り立つものですから。

食と農を取り戻すことで、人々は本質的な生き方に回帰してゆける。ひいてはそれが、農家さんのすごさやありがたさを理解できたり、資本主義や人間中心主義からも脱却し、サステナブルな自然中心社会に還っていくきっかけに繋がっていくのだと、私は信じています」
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取材・文=西山武志、森ユースケ 撮影=杉原洋平

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