「アフリカに帰れ」 ヘイト投稿を観光施策に逆転させた痛快なアイデア

"Go Back To Africa" by FCB/SIX Toronto for Black & Abroad | The One Show 2020より


さらに、Black & Abroadが着目したのは、ネット上に存在するアフリカ旅行の写真は登場人物のほとんどが白人であることだった。

そうした偏ったイメージの影響で、「黒人自身が自らのルーツであるアフリカ旅行を楽しむ」という発想を持てないでいると考え、黒人自身がアフリカ旅行を楽しんでいる写真をネット上で探索し、自社のウエブサイトにアップ、「黒人が楽しむアフリカ旅行」というパーセプションの醸成に努めたのだ。

データとテクノロジーを駆使しながら、アイディアでネガティブ要素をポジティブに鮮やかに変換して見せた痛快な観光施策だと思う。

伝説的ベテランCDの言葉


さて、われわれはこの取り組みから、何を学べばよいだろう?

日々生きていれば、時にネガティブな状況に立たされる。そのままネガティブに受け取れば落ち込むだけだが、上手くポジティブに転換することができれば、一気に積極的になることも可能だ。

それは個人としても言えることだが、チームのリーダー役には、特にこうしたマインドセットやスキルが必要だと思う。

私が長年携わった広告クリエイティブの仕事で言えば、編集を終えたほぼ完成形のテレビCMに対して、クライアントのOKが出ないといったことがあった。最終的なOKが出なければ、納品できず、オンエアもできず、仕事が終わらない。また手間暇かけて、編集の「やり直し」をしなければならない。たいていの人は、そのことで顔がゆがむ。

そんな状況で、ある伝説的なベテランのクリエイティブディレクターは、笑顔でこう言い放ったという。

「編集やり直しになって良かったじゃん。だってもっと良いテレビCMにできる可能性が広がったということだよ。ワクワクするね、さぁ、やろうやろう」

こうした「ネガティブからポジティブ」の思考変換は、物事への対処の仕方の姿勢しだいで、誰でも持つことが可能だと筆者自身は考えている。ネガティブな状況に陥ったとき、ぜひ、この思考変換を試してみてはどうだろうか。

連載:先進事例に学ぶ広告コミュニケーションのいま
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文=佐藤達郎

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