カルチャーフィットに悩んで早期退職する社員の中には、こうした「細かいことの積み重なり」がストレスになり「思うように働けない」という結論にいたる例も少なくない。
ここでの注意点は、それらを伝える側が転職を経験していないと、何が自社独自なのか、視野が狭いために線引きできないケースもある。そうした場合は別の会社ではたらく友人知人に話を聞くなどして、会社のことを相対化したうえで研修ができると良いだろう。
既存社員のマインドづくり
オンボーディングでもう一つ欠かせないのが、既存社員が「受け入れ体制」を整えることだ。
リファラル採用などのケースは除いて、基本的には「知らない人ばかりの組織に入って、即戦力になることを求められている」。こうした前提に立てば、前職で秀でた成果を残したといっても、必ずしも新しい環境でうまく活躍できない背景が見えてくるだろう。
こうした双方にとってのリスクを減らすために、「仕事以外の場で人間関係を持てる場」や、「仕事の進め方などの相互理解を促進する場」が必要だ。
既存社員から見ても、採用フェーズに関わっていなければ中途社員は未知の存在だ。場合によっては「自分の居場所をおびやかす存在」として、心のなかでは脅威に感じている社員もいるかもしれない。
だからこそ、相互の心のなかに存在する不安をどう解消するかが人事担当の腕の見せ所でもある。
「人間関係を持てる場」でもっともポピュラーなのは、歓迎会として宴席を設けるケースだ。しかしこれはそもそも業務時間外、かつ最近は飲酒・喫煙に対してネガティブな人もいる。また、新しい環境に来たばかりで、朝から晩まで「知らない人」と過ごすことが本人も気づかぬうちにストレスになる場合もある。そのため、オフィス街であればランチタイムを利用するなども一つの方法だ。
「仕事の進め方などの相互理解を促進する場」としては、昨今よく耳にする心理的安全性を既存社員・新入社員どちらにとっても担保できる取り組みが大切だ。
たとえばある外資系企業では、コーヒーブレイクなどの小休止の時間に、チームメンバー全員が輪番で「私はこういう仕事は得意、だけどこういうコミュニケーションの仕方をされるのが苦手」といった自分の特徴をさらけ出す場を用意して、思いやりで仕事の効率を上げる取り組みが行われて成果を上げている。
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採用して終わりではなく、環境のデザインを
離職率低下へのアプローチとして、入社前後での改善策を紹介した。単にスキルが、カルチャーが合わないと片付けるのではなく、それをどこまで分解・分析して解決していくかが大切だ。
また、いくら他社での経験がある人材だからといって、どんな環境でもすぐに活躍できると考えるのは幻想だ。適応段階を新入社員に「丸投げ」するのではなく、組織として人材が力を発揮するための「環境をデザインする」という視点に立つことで解決できることがあるはずである。
また、これまでの話はフルタイムかつ無期限での雇用を前提とした、いわゆる正社員採用を念頭に置いている。だがご存知の通り、昨今は業種・職種問わず多様な働き方で活躍する人材が多くいる。
そのため、もしどうしても明日から業務に入って現場を手伝える人材が必要な場合、必ずしも正社員(従業員契約)ではなく、業務委託や準社員としてミッション/プロジェクト毎の契約や、週2、3日といったパートタイムでの関わり方、あるいは専門チームに外注するなどの方法でリソースを調達する方法も選択肢として考えてよいだろう。
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