採用要件
採用するにあたって、どのような人材を求めるのか、そのターゲット像を明確にしたものが採用要件だ。「スキル」と「カルチャー」の2つの観点から定義することがよいだろう。
まずスキル面では、採用予定ポジション(部門)の責任者を中心に、候補者に求める保有技能や経験、資格などの条件を明確化していく。ただしあまり条件が多かったり、全ての要件を同等に求めてしまったりすると、それに合致する人材が少なくなり、採用機会を逸してしまいかねない。
そのため、優先度を分ける意味で「必要要件」と「歓迎要件」に分けることが肝要だ。
次にカルチャー面では、採用企業の経営陣を中心に、自社の文化や価値観、どんな人がストレスなく業務に打ち込め活躍していくことができるのか、そんな「志向性」や「行動特性」などを明確化していく。
カルチャーのミスマッチが起きると、入社後のモチベーション低下だけでなく他の社員への影響、ひいては離職に繋がってしまう懸念があるため、これらを防ぐ効果は大きい。しかしながら、カルチャー面でフィットする・しないを判断するための項目の選定や評価は言語化が難しく、面接官の主観的判断に依拠する部分が大きくなりがちな点は要注意だ。
この解決策として、別途「採用基準」を深掘りしていくことも重要となる。
採用基準
前項の採用要件においてカルチャー面の評価は統一化が難しいと述べたが、その統一化を担うのが「採用基準」だ。その中身としては結局のところ、「今欲しい人材はなぜ欲しいのか」というところを明確化し、社内全体に共有することである。
例えば、募集背景が、「バックオフィスの要として活躍していたXさんの後任が欲しい」、ということであれば、簡単に言ってしまえば「Xさんのような人が欲しい」と言い換えられる。
その上で、Xさんが「スケジュール管理に優れ」「主体的に各部署へのリマインド対応ができる」人であれば、そうした特性を第一の優先基準とすることで、面接官毎に大きなバラつきが生じることを防ぐことが期待できるのだ。
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採用基準の設計と運用|選考の質を高め、社員の定着率を向上させる
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採用後のポイント:定着率を上げる「オンボーディング」
採用要件と採用基準はいわば、入社前のフィルターである。厳しい選考をくぐり抜け、そのフィルターを通過した人材に対して、入社後にはどのように接したらよいのだろうか。
さらにフィルターにかけるという考え方もあるかもしれないが、トレンドはむしろ「いかに受け入れ体制をつくるか」という考え方だ。
入社後の離職率を下げる、そしていち早く中途の新入社員を戦力化するため、特に最近は「オンボーディング」(英語で「船や飛行機への乗船」を意味する)という言葉が広まり始めている。
OJT以外の研修は中途社員にも不可欠
中途入社した社員の研修というと、OJT中心の会社は多いが、本当にそれだけで十分だろうか。中途社員とはいえ、新卒社員と同じく集合型の研修が欠かせない。
ここでいう研修とは「社会人としての礼儀マナーを叩き込む」だけの場ではない。中途入社の社員に対してそれは不要だろう。
そうではなく、中途社員に必要な集合型の研修とは、「自社が大切にしている行動指針やトップメッセージ」あるいは「資料やメールでの“自社独自のお作法”」など、入社する社員側からみた「今までと変わる(であろう)点」を伝える場だ。