ビジネス

2020.08.14

日本人が挑む 「見捨てられた貧困地域」への教育支援

倉科茉季さんとベナンの子どもたち

以前このコラムでも紹介した、西アフリカのベナンでビジネスを展開する日本人女性、川口莉穂さん。彼女は、独特の鮮やかな色味と大胆な柄が特徴の「パーニュ」と呼ばれるアフリカ布を使って、ベナンの職人とともに浴衣やエプロンなどをつくり、日本で「シェリーココ」というブランドを展開している。

前回は、莉穂さんの新たな取り組みも紹介させてもらった。それは、パーニュの柄を活かした、布以外の商品の展開だ。

布製だけだと、つくることのできる製品限られてしまうし、パーニュはその生地の特性上、伸び縮みがしにくく加工もしにくい。さらに既存のパーニュの柄には著作権の問題もあり、他の商品にデザインを応用することもできなかった。

そこで莉穂さんは、パーニュの特徴を活かした新たな柄を自らデザインし、パーニュでは実現不可能なアイテムの商品展開も検討している。

新製品開発でのジレンマ


以前、このように紹介させてもらったが、このほど、ようやくその莉穂さんが開発した新商品のサンプルが完成したという。ラインナップは、スマホケースにマグカップ、Tシャツやパーカー、ポストカードなど。今後もさらにバリエーションを増やしていく予定だ。


「シェリーココ」のアイテム

しかし、実は、これらの商品をつくっているのは、ベナンの人たちではなく、日本の企業なのだ。ベナンには、製造を請け負ってくれる工場がないのだという。

シェリーココは、ベナンの人々の雇用を創出することを目的に、莉穂さんが立ち上げたブランドだ。日本の会社に製造を委託しても、ベナンでの雇用にはつながらない。莉穂さんにとってはちょっとしたジレンマだが、彼女はベナンでビジネスを展開しているわけであって、もちろんボランティアではない。しっかりとした収入源を確保しなければ、その活動は続けられない。

日本でつくるパーニュ以外の商品展開を図ることでも、すなわち間接的にベナン人の職人たちの雇用を維持し続けることにつながるのだ。起業家として、莉穂さんはそう決断しているはずである。

とはいえ、莉穂さんは、この現状に納得しているわけではない。もともと莉穂さんは、ベナンという国ではなく、ベナンの人に惚れ込んだからこそ、ベナンでビジネス展開を決意した。なんとかして、ベナンの人に貢献できる方法はないだろうかと。
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文=鍵和田 昇

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