コロナ禍で現地滞在が難しく
今回のクラウドファンディングでは、そのクラリスの出身であるコベという街の子どもたちが支援の対象になる。茉季さん曰く、コベは「政府や外国からの支援も行き届かないような、本当に見捨てられた貧困地域」なのだという。
もちろん、このような支援を続けることには限界があることも彼女は知っている。継続した就学支援のシステムを構築することが、目下の茉季さんの課題だ。現地での人脈を生かして、クラリスも積極的にこの課題の解決に取り組んでくれているという。
だが、物事は順風満帆には進まない。ベナンに来た直後、茉季さんはベナンの教育機関が抱える難問に直面することになる。とにかくお金が回らないのだ。
茉季さんとクラリスが暮らすカラビという街には、ベナンで最も権威のあるカラビ大学がある。「ベナンの東大」とも言えるようなこの大学でさえ、教職員に給料が払えず、ストライキがおきるのだという。茉季さんが働くビジネススクールや小中学校でも、給料の未払い問題は常につきまとっている。
倉科茉季さんとクラリス
さらに、コロナ禍が襲いかかった。ベナンに駐在する海外協力隊や大使館の職員も帰国をするなか、国からのバックアップもない茉季さんが現地に留まり続けるのは、大きなリスクしかない。今年3月中旬、志半ばで茉季さんは日本へと帰ってきた。
コロナ禍の影響を受けているのは、茉季さんだけではない。このような状況のなか、クラウドファンディングを一緒に立ち上げた莉穂さんもベナンに戻れずにいる。現在はベナンからの流通もストップしているため、現地の職人が縫った商品が日本へ発送できずにいるという。それらの商品を日本に卸さなければ、シェリーココの売り上げにもならない。
なるべく早くベナンに戻りたいと口を揃える2人。茉季さんはいまのところ、9月にベナンに戻る予定を立てているようだが、昨今の状況を見る限り、年内の渡航は難しいだろう。同様に、ベナンで2人を待つそれぞれのパートナーも不安を抱える毎日を送っているにちがいない。
いずれ世界に平穏が戻ったとしても、ベナンの教育現場を取り巻く環境は変わらないだろう。いや、学校に通えない子どもたちが、さらに増えると考えるほうが自然である。
他の国々と同様に、ベナンという国もさまざまな問題を抱えている。それらの問題を解決するためには、彼ら自身がそれに立ち向かっていくしかない。そのために必要になるのが、他ならぬ教育だ。教育がなければ、国の発展はない。1人でも多くの子どもたちに、教育の機会を提供する必要があるのだ。
ベナンを想う彼女たちと同様に、ベナン人の人柄に魅了された者の1人として、少しでもこの国の未来を明るく照らせる可能性が生まれるならば、 僕も微力ながら、2人の活動を応援させてもらおうと思っている。