ビジネス

2020.08.14

日本人が挑む 「見捨てられた貧困地域」への教育支援

倉科茉季さんとベナンの子どもたち


莉穂さんは、現在、新製品をリターンとしたクラウドファンディングに取り組んでいる。その目的は、ベナンの子どもたちに教育を受ける機会を提供するためだ。

ベナンにも日本と同様に、義務教育という制度がある。しかし、学校に通うためには、制服や教材、入学金、進級試験を受ける費用など、さまざまな経費が必要となる。それらの費用を賄うことができない家庭の子どもたちのために、今回のクラウドファンディングが立ち上げられた。

目標金額の70万円で、10人の子どもたちが学校に通えるようになるという。目標額以上に支援が集まれば、その分だけ学校に通える子どもたちも増える。

1週間の滞在でベナン移住を決意


さて、今回、莉穂さんが子どもたちの教育支援に取り組んだのは、1人の女性の影響がある。ベナンで英語を教える日本人女性、倉科茉季さんだ。今回のクラウドファンディングは彼女と一緒に立ち上げた。

2人の出会いは2019年の3月。莉穂さんがポップアップストアを開いていた横浜のデパートを、茉季さんが訪ねたことにはじまる。

「その前の年の12月に、ベナンに1週間滞在したんです。それで、ベナンに引っ越して英語を教えることを決めました。莉穂さんのことは、ベナンで活躍する日本人女性ということで知っていました。7月末にはベナンに発つことを決めていたので、日本を離れる前に、莉穂さんに会いに行ったんです」

そうさらりと語る茉季さんだが、ベナンに滞在したことのある僕からしても、たった 1週間の滞在でベナンに引っ越しを決めるというのは、清水の舞台から飛び降りるどころの騒ぎではない。そんな大英断を下した茉季さんだが、ベナンへの移住を決めるまでは、日本の中高一貫教育の学校で英語教師として働いていた。

大学で国際関係を学んだ茉季さんが、英語教師の道を志したきっかけは、塾講師のアルバイトだった。高時給だからという理由で選んだアルバイトではあったが、そこで英語を教えることの楽しさに目覚めたという。茉季さんは大学院に進み、英語教育を専攻した。


川口莉穂さん、倉科茉季さん

「もともと、環境とか人権とか平和に興味があって、国際関係学を学んでいました。でも、これだけボーダーレスな時代になれば、それらの問題は地域だけの問題ではありません。地球全体で解決策を考えなければならない時代に、先頭に立って取り組む人間を育てたいと思ったんです。そのために必要になるのが、国際共通語である英語。だから英語教師の資格を取りました」
次ページ > 物も満足にないようなところで英語を教えたい

文=鍵和田 昇

ForbesBrandVoice

人気記事