オースティン本拠の同社は7月31日、米ナスダック市場に上場を果たし、株価はIPO価格の22ドルから60%の急騰となった。バイタル・ファームズは2018年時点で累計2800万ドルを調達し、企業価値は1億3600万ドルとされていたが、上場後の時価総額は13億ドル(約1380億円)に達することとなった。
同社の創業者のMatt O’Hayerは、フォーブスの取材に「当社はずっと資金調達には困らずにやってこれた」と話した。
放牧卵をはじめバターやゆで卵、ギーなどを製造するバイタル・ファームズの2019年の売上は1億4000万ドルに達した。同社はクローガーやホールフーズなど、全米の1万4000店舗の食品スーパーに商品を卸し、契約農家は200を超えている。
「当社は小さな農家たちと共に発展してきた。農家を搾取したりせずにね」と、創業者のO’Hayerは話す。投資家はサステナブルな領域への関心を高めており、植物由来の人工肉を作るビヨンドミートの株価は昨年5月の上場以降に、175%の上昇となっている。
13歳の誕生日を迎える前に、近所の人たちに卵を売っていたと話すO’Hayerにとって今回は2回目のIPOだという。彼は以前に創業した旅行予約企業を1998年に上場させたが、911テロ後の需要の減少を受けて廃業していた。
O’Hayerはその後の数年を旅行業界で過ごした後、2007年に彼の友人でホールフーズの共同創業者のジョン・マッキーが暮らすオースティンに移住した。マッキーからオーガニックでエシカルな食品の需要が高まっていることを聞いて、O’Hayerはこの分野での起業を思い立った。
彼はまず20羽の鶏を購入しオースティンで育て、地元のファーマーズマーケットやレストラン向けの販売を開始した。しかし、当時は彼が望むような価格(10ドル以上)で卵を買う顧客は存在せず、売れ残った卵をフードバンクに寄付する日々が続いたという。
金儲けよりも面白いこと
「それでも私は、持続可能なビジネスにふさわしい価格を消費者に理解させようとしていた」と、O’Hayerは2018年のフォーブスの取材に話していた。
その結果、ホールフーズやアルバートソンズの顧客らはバイタル・ファームズの卵の価値を認識するようになり、スケールを拡大した結果、今では同社の鶏の卵の価格は1カートンが5.59ドルとなっている。
現状で同社の卵を購入する米国人消費者の割合は、わずか2%だが、O’Hayerは上場により、その比率を急速に拡大できると見込んでいる。
「私は常にエグジットを目指していたが、それは金持ちになりたいからではない。上場することによってプロダクトに注力し、従業員や顧客、株主、そして環境に役立つ企業を目指したいと考えていた。金儲けよりも、もっと面白いことがある」とO’Hayerは話した。