目立ってはいけない不自由な時代。「ソロキャンプ」という休みのすすめ

自然が教えてくれるシンプルな暮らしを


では、現在のキャンプ場はどうなっているのだろうか。コロナ感染へのケアは必要だろうが、風通しのいい野外で過ごすのは密とは程遠い。我が家だけでのファミリーキャンプであればまったく問題がないのではないか。

「キャンプ場は予約制限をしながら、6月初旬からオープンし始めました。8月からやっと本番という感じではないでしょうか。トイレと炊事場は共用なので、そこは気を付けるポイントかなと思います。飛沫感染を防ぐために、トイレは蓋をしてから流すといったエチケットも必要です」(牛田)

あとは風呂の問題が残る。キャンプ場近くのスーパー銭湯に行く人が多いが、気になるなら風呂なしで過ごすのもいい。縦走登山をする人にとっては風呂なしが普通だが、家族からはブーイングがおこることもある。その点はそれぞれの価値判断でとしかいえない。

注目はソロキャンプという新スタイル


そんななか、この状況を想定していたかのようなブームが起きている。それが「ソロキャンプ」というスタイルだ。

2、3年前からじわじわ人気が高まっていたが、お笑い芸人でユーチューバーでもあるヒロシの影響で一気に広まった。小売り各社は、コロナ禍以前から2020年のトレンドを「ソロキャンプ」と想定し、関連商品をプッシュしていく算段で動いていたほどだ。

「ソロキャンプ」とは読んで字の如く、「ひとりで行くキャンプ」のこと。これもまたキャンプブームの副産物といえる。インスタ映えやグランピングなどが話題になった頃、すでにキャンプを趣味としていた人たちは「私も行きたい、連れて行って」と一躍人気者になった。しかし、それが仲間内であろうと知り合い家族であろうと、装備を持たない初心者と行くキャンプは、経験者にとって負担が大きいのである。

パンダシリーズのソロテント
ワンポールテントは、デザイン性と居住性の高さで人気。こちらはソロキャンプ向けに開発されており前室の広さが特徴。一般的にソロテントは登山用のものが多く、使い勝手よりも軽量性重視。ゆえに、独自性の高い「パンダ」シリーズは常に品薄が続くほどの人気商品。 20300円(税別) 問い合わせ:テンマクデザイン

キャンプ上級者であっても「自然のなかでのんびりしたい」という気持ちは同じ。それが、準備から後片付けまで大忙しで、ヘトヘトになる経験を何度も味わうことになる。「こんなことなら、ひとり気ままに過ごしたい」。これがソロキャンプ・ブームの大きな要因となった。そして現在、パンデミック化での安全な遊びとしてもフィーチャーされ始めている。

「密になりようがないですからね。ひとりを想定した道具も充実していますし、実際に売れ行きもいいです」(牛田)

ベルモントの焚火台

横幅36cm、縦幅23.7cm、高さ17cmとコンパクトながら、側面を外せば大きな薪も使える焚き火台。焼き網付きで湯沸かしや調理も可能。約423gと軽量なのもポイント。焚き火を最大の楽しみとするソロキャンパーの必需品。「焚き火台 TABI」 10000円(税別)問い合わせ:ベルモント

ビーコンライト

米ソルトレイクシティ発の新興ブランドでありながら、アンティーク風なデザインで人気のベアボーンズ。このライトは、上部のカラビナで引っ掛けたり、自立して使うことができる、幅7.6cm、高さ15.2cmとコンパクトなLEDライト。「ビーコンライトLED」 5500円(税別)問い合わせ:エイアンドエフ

おひとりさまはキャンプ以外でもキーワードに


キャンプというのは、気軽さゆえに「底が浅い」遊びでもある。段階によってキャンプそのものが変化するからだ。

便利な道具を揃え、スムーズに組み立てられ、火が熾せたら中級者。その後、見栄えの良さや手の込んだ料理へとシフトするが、やりすぎると「自然のなかでのんびり」ができなくなるので、ある時期から装備がシンプルになり料理も簡素化され始める。さらに削ぎ落としていくと「ソロキャンプ」となり、その先には極力自然から物資を調達する「ブッシュクラフト」へと繋がっていく。または、キャンプはあくまでも野営の手段という基本に戻り、登山やカヌーといったアクティビティに精を出すパターンもある。

「自然のなかでのんびりしたい」。そんなキャンプへの思いはコロナ禍が長期化するほどに高まってくるだろう。しかし、家族ですら躊躇せざるを得ない空気がある。それならば、必要最小限の荷物で自由気ままに「ひとりで行く」。または、同じ自己完結スタイルの仲間と現地集合。そんなソロキャンプというスタイルが、新たなトレンドになることは間違いない。

不自由な時代の「休み」は目立ってはいけない、人と離れなくてはといけない。「おひとりさま」は、キャンプに限らず新しい生活様式の「遊び方」として頭角を現すだろう。

文=富山 英三郎

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