料理初心者は「肉じゃが」ではなく「丸暗記」から始めよ。その理由とは?

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ところが、定番メニューとはいえ、クックパッドの肉じゃがのレシピだけでも1万品を超える。唐揚げは3万品以上。どのレシピを選べばいいかの目安もわからず、結局評価の高いレシピからいくつかつくってみるものの、なぜかそのつくり方が根付かない。そうしていつまでたっても「レシピがないとつくれない状態」から抜け出せない人もたくさんいるようだ。

彼らはいろいろなレシピをつくってみても「料理が上手になった気がしない」と嘆く。「自分でつくれた」という成功体験が感じられず、いつまでも「基本を身につけたい」というところから前に進めないというのだ。

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私のモヤモヤの原点はここにある。この分断はいったいどこで起きるのだろう?

そして私はようやく気づいた。それは、身につけるべき目のつけどころが、レシピそのものではなく、「味つけの基本」をおさえているかどうかだということだ。茶道や武道の「守破離」*になぞらえるなら、料理の「守」は、定番メニューのレシピではなく、「味つけの基本」を丸暗記することなのだ。そしてそれはシンプルだ。

*「守」は、師や流派の教え、型、技を忠実に守り、確実に身につける段階。「破」は、他の師や流派の教えについても考え、良いものを取り入れ、心技を発展させる段階。「離」は、一つの流派から離れ、独自の新しいものを生み出し確立させる段階。(『デジタル大辞泉』より)

例えばサラダなら、オイル1:酢1に、塩分か甘みを好みで少し加えるだけ。大抵、オイルと酢は大さじ1、塩分か甘みは小さじ1と覚えておくとうまくいく。オリーブオイル+リンゴ酢+蜂蜜なら少し甘味のあるやさしい風味のドレッシングになるし、ごま油+米酢+しょうゆなら、韓国風サラダ「ナムル」の出来上がりだ。

和食の味つけも、実はとってもシンプル。しょうゆ、みりん、酒の比を、1:1:1と覚えておくだけでいい。肉じゃがも魚の煮付けも、牛丼も親子丼もこの比でやれば失敗しない。肉、魚、野菜それぞれから天然の出汁が出るので、このシンプルな調味料だけで十分なうま味が出る。

これを丸暗記して何回かつくれば、確実に料理の基本が身についてくる。そしてそこに、塩味を加えたければ塩や醤油を少し足したり、甘味が欲しいときは蜂蜜、クリーミーにしたければヨーグルトや牛乳、定番の生姜焼きなら生姜の絞り汁、サバの味噌煮なら味噌を加えるといった具合に、守るところは守り、次に自分好みの味をつくり出していけばいい。料理は自由に、クリエイティブであり、どんどん楽しくなるはずだ。
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文:小竹貴子 構成:加藤紀子

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