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確かに『COUNTDOWN 1945』では、さまざまな登場人物のディテールにまで迫る記述が目立ち、一般のアメリカ人にとっても読みやすく、ベストセラーになるのもうなずける。特にトルーマン大統領が原爆投下を決断する際の、迷いや苦渋を描き出した箇所などは多くの読者を引き込むにちがいない。また、原爆を落とされた側の視点を組み込み、その痛みを伝えようとする努力がみられる点などは、本書が「人間味あふれる」と言われる所以だろう。


Chris Wallace『Countdown 1945』(画像はKindle版の表紙から引用)

しかし、私たち日本人にとっては違和感を覚える部分もある。というのも本書では、原爆が引き起こした非人道的な被害について触れられはするものの、結局は原爆投下を支持したトルーマンの判断を正当化するような結論へと進むからだ。ここには日米の歴史認識のあいだにギャップがあると感じざるを得ない。

現代でも多くの米国人が広島と長崎への原爆投下を支持


2015年にアメリカのシンクタンクであるピュー・リサーチ・センターが実施した調査では、原爆投下は「正当化できる」と答えた日本人は14%にとどまり、79%は「正当化できない」と回答している。逆にアメリカ人では56%が「正当化できる」と回答し、過半数を上回った。原爆投下に関する歴史認識には、日米のあいだで超えられない深い溝があるのだ。

『COUNTDOWN 1945』によれば、広島と長崎への原爆投下から数日後に行われたギャラップ社の世論調査では、85%のアメリカ人が原爆投下の決定を支持していた。真珠湾攻撃以降、日本軍による残虐行為はアメリカで何年にもわたって報道されていたので、敵国である日本に同情の余地はないと感じるアメリカ人がほとんどであったという。

また同書では、ギャラップ社の創始者であるジョージ・ギャラップが1945年9月に述べた次のようなコメントも紹介されている。

「破壊力のある原子爆弾は人類の安全保障に対する脅威を含んでいるが、国民の心の中では、原爆は終戦を早め、将来の有用な原子エネルギー開発への道を指し示したと考えられている」

終戦が早まったことを理由に、原子爆弾の投下を肯定する意見は、アメリカではその後も繰り返し登場し、支持を集める主張だ。『COUNTDOWN 1945』には、「原爆投下を決定したことに対する国民の支持が原爆投下後すぐの85%に戻ることはなかったとしても、その支持率は安定していた。被爆60周年を迎えた2005年には、原爆投下を支持するアメリカ人は57%、反対する人は38%だった」と綴られている。

文=渡邊雄介

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