町田への連絡と時をほぼ同じくして、Jリーグから鳥栖へ、公式検査の結果として発熱した選手全員の陰性が確認されたという連絡が入った。試合当日の混乱を避ける意味で、発熱者が出たことを午後の段階ですでにFC東京側へ連絡していた鳥栖は、全員が陰性だったことをあらためて連絡している。
対戦チームへの連絡も、前出のガイドラインで定められたプロトコルには明記されていない。FC東京側へ連絡した背景には情報を共有できればという鳥栖側の思いが働いていたが、連絡が午後7時のキックオフ直前になったこともあって混乱も生じた。発熱者=感染者という懸念が先走りしたためだ。
前出の会見で、今後も同様の事態、キックオフ前にどちらかのチーム内に発熱者が出た場合の対応を問われた、FC東京長谷川監督は、きっぱりと「(試合を)やるべきではないと思います」と複雑な胸中を明かしている。
「濃厚接触者が特定されなかったということですが、昨日の夜に熱を出した選手がいるなかでわかるわけがない。そういう選手が遠征へ同行したとなれば、その時点で全員が再びPCR検査を受けて陰性がわからなければ、選手たちも安心してプレーができない。安心を担保できないなかで試合へ臨ませることを、これからちょっと考えてもらいたいと思ったので、あえてあの場で話をさせていただきました」
衝撃を伴っていたぶんだけ長谷川監督の言葉が独り歩きするかたちとなり、なかには「鳥栖が発熱者を隠して試合を強行した」と受け止れるようなタイトルがつけられた記事もネット上に登場した。しかし、実際には鳥栖はプロトコルを遵守したうえで、定められていない措置まで講じていたのだ。
先に鳥栖へ戻った選手は、3日にあらためて受けたPCR検査で陰性が確認された。一連の経緯を説明した鳥栖の竹原稔代表取締役社長は「情報発信のタイミングが、とても難しかった」と振り返っている。
一方、晴山以外にも陽性判定が出るおそれがあった町田のもとへ、他は全員が陰性だったとするJリーグ公式検査の結果が連絡されたのは2日午後3時半すぎだった。京都とのキックオフは午後6時半。京都と緊急の話し合いの場をもち、公式検査結果と遠征メンバー内に晴山の濃厚接触者はいないという所轄保健所の最終判断を伝え、予定通りの開催へとこぎ着けた。
キックオフ2時間前に陽性の可能性が
しかし、今度は町田とともに検査を急がせた検体のなかから、福岡の選手1人から陽性判定が出る可能性が極めて高いことが判明。検査センターからJリーグへ連絡が入った時点で、敵地で行われる大宮とのキックオフまで、あと約2時間と迫っていた。
Jリーグは急きょ感染症の専門家チームと協議の場をもった。そして、約45分後には中止とする苦渋の決断をホームの大宮へ伝えている。すでに先発メンバーが発表され、一部でファン・サポーターの入場も始まっていたなかで中止とした理由を、村井チェアマンはオンライン会見でこう説明した。
「仮にその選手が陽性だった場合、チーム内で濃厚接触が起こっている可能性を否定できなかったゆえに、今回は試合の開催を見合わせようという判断を、このタイミングで下しました」