JリーグのPCR検査体制に疑問 無症状の陽性者がピッチに立つ可能性も

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結論から先に言えば、遠征で東京入りした鳥栖の選手1人に、試合前夜の就寝時に38度の発熱が確認された。鳥栖はすべての選手およびスタッフの行動履歴をアプリで記録していて、新型コロナウイルスに感染している場合に備えて選手の食事の場所や時間、相手などをすべて把握、独自に発熱した選手の濃厚接触者を確認する手はずを整え、当該選手をホテル内で隔離した。

その選手は一夜明けた試合当日の朝には平熱に戻ったものの、万全を期す措置として佐賀県鳥栖市へ戻した。そのうえでJリーグに連絡を入れたが、この連絡は、再開へ向けてJリーグが定めた70ページを超える「新型コロナウイルス感染症対策ガイドライン」には明記されていない念のためのものだった。

「1回の発熱は環境や状況などによって起こりうる。ただちに新型コロナウイルス(に感染した疑いがある)とは言えないため、37.5度以上の発熱が2日続いた場合にしています」

Jリーグの村井満チェアマンは、Jリーグへの報告義務と自主隔離を定めたガイドラインの基準をこう説明していた。鳥栖の選手は「37.5度以上が2日続いた場合」には該当しなかったが、感染の再拡大が続いていた東京都内へ遠征した状況を重く見た鳥栖は、万が一の事態を危惧してJリーグへ相談したのだ。

そして、Jリーグ側も動く。7月30日および31日に実施されていた、Jリーグによる第4回公式PCR検査に関して、鳥栖から採取された検体を早めに検査してほしいと検査センターへ連絡した。本来はJ1クラブの結果は8月3日、J2およびJ3のそれは同4日に出る予定だった。

JFAから飛び込んだ予期せぬ一報


週末返上で検査を急がせている過程で、予期せぬ一報が日本サッカー協会(JFA)からJリーグに飛び込んできた。1日から千葉県内で予定されていたU-19日本代表のトレーニングキャンプ、宿舎への到着時に実施された検査で、招集された選手1人から陽性判定が出たのだ。

その選手は町田のルーキー、FWの晴山岬(新潟・帝京長岡高卒)だった。簡易検査で陽性判定が出た晴山は、PCR検査を受けたうえで隔離され、U-19日本代表のトレーニングキャンプは中止となった。最終的な結果は1日夕方に判明する予定だったが、前述のようにJFAはすぐにJリーグへ連絡。町田を含めた全選手の公式検査の結果を可能な限り早めに出してほしいと、Jリーグも検査センターへ再び要望した。

そして、JFAが晴山に対して実施したPCR検査で、陽性が正式に確認された。町田へ連絡が入った1日午後6時ごろの時点で、2日の京都戦に臨む遠征メンバーは新幹線ですでに京都入りしていた。晴山は7月31日まで町田の練習に参加していたため、町田は晴山および遠征メンバーの行動履歴を所轄保健所へ提出。濃厚接触者の特定を急ぐとともに、Jリーグ公式検査の結果を待った。
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文=藤江直人

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