パンデミック中の米国、がん診断数がほぼ半減

Tom Werner/Getty Images

米国では2020年3月と4月に、がんの診断数が激減したことが新たな研究で指摘された。3月と4月はちょうど、新型コロナウイルスの感染拡大を抑制するために、全米でロックダウン(都市封鎖)が実施されていた時期だ。

米医師会(AMA)の医学誌『JAMAネットワーク・オープン(JAMA Network Open)』で2020年8月4日に発表された研究は、医療診断記録に着目し、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)が始まる前と後それぞれで、肺がんや乳がん、大腸癌など6種のがんと診断された患者数の週平均を割り出した。

研究で使われたデータセットによると、パンデミック前(2019年1月~2020年2月)のがん診断数は、週平均で4310件だった。ところが、パンデミックの最中である3月1日から4月18日まででは、新規のがん診断数の週平均は2310件で、マイナス46.6%と大幅減となった。

ハーバード大学ダナ・ファーバー癌研究所(DFCI)の主席医務官であるクレイグ・バンネル(Craig Bunnell)医学博士は、「この研究結果は、パンデミックへの初期対応として、緊急を要さないスクリーニングと検査を制限すると、重大な影響が出ることを示している」と述べる。「それら6種のがんの発生率は、実際には下がっていない。がん診断数が減ったのは、診断が遅れたという意味であることは間違いない。そしてがんの場合、診断の遅れは重大な影響を及ぼす」

がんの診断数が減っているのは米国だけではない。英国でも、かかりつけ医から、がん専門医への紹介件数が75%減った。オランダでも、1週間のがん発生症例数が40%減少している。

がん診断の遅れは、パンデミックがもたらすきわめて深刻な副次的作用であり、その影響は今後数年にわたって続くかもしれない。

今回の研究論文の著者たちは、「人々がソーシャル・ディスタンシング(社会的距離戦略)を実践していても、がんは待ってくれない。診断が遅れれば、がんがより進行した状態で発見されたり、予後不良を招いたりする可能性が高くなる」と指摘している。

査読前の別の研究は、米国では診断や治療の遅れといったパンデミックに関連した複数の要因により、がんの超過死亡者数が3万3000人に達するおそれがあると予測している。医師たちは、がんを疑う症状など、待つべきではない症状があれば、パンデミックであっても受診をためらうべきではないと強調する。

「医師たちは、がん検査を安全に実施する必要がある。また、一般の人々は、検査は受けなくてもよいなどと考えてはいけない。命がかかっているかもしれないのだから」とバンネルは述べた。

翻訳=遠藤康子/ガリレオ

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