日本の感染者数が爆発的に増加し、Gotoキャンペーンの是非が問われる一方、同じく連日1000人を超える感染者を出しながら、国民総出で気ままにバカンスを楽しむ国がある。フランスだ。
有給休暇取得率100%とも言われるフランスは、とりわけ夏のバカンス休暇を大事にする。7月から8月にかけて、老いも若きもひと夏を過ごす地を目指し喜び勇んで旅に出る。週末間際のパリ、モンパルナス駅ともなれば、長距離列車に乗る旅行者で朝から大混雑。改札前には長蛇の列ができ、駅員たちが絶え間なく乗客を整理誘導する。今年のコロナ禍においても、そんなフランスのバカンス熱は変わらない。
大行列のパリ・モンパルナス駅
かく言う筆者もバカンス旅行に出かけた一人。ごった返す駅の人混みに、もはや「ソーシャルディスタンス」という概念はない。ただ唯一、例年と違うのは、皆一様にマスクを着用していること。というのも、フランスではロックダウン解除後も、公共交通機関でのマスク着用が義務化しているからだ。違反者には罰金135ユーロ。駅構内および乗車中も、マスク着用は必須である。
バカンスの目的地はラ・ロシェル、大西洋岸の美しい港町だが、到着してまず驚いたのは、人の多さ、とりわけ、圧倒的なフランス人の多さだ。道行く人の会話に耳を傾ければ、フランス語ばかり。もともと、欧州圏内で大人気の観光地ではあるが、アジア人を全く見かけないのはもちろん、英語を話す人すら珍しい。路上の大道芸に歓声をあげ、肩を組んで歌をうたい、夜中まで大賑わいの街は、ほぼフランス人観光客だけで成り立っていたと言っていいだろう。
人気観光地のラ・ロシェルを歩くのはほぼフランス人観光客だ
同じような変化が、隣接する街ボルドーでも起きている。ワイナリーツアーを開催している、あるシャトーの担当者によれば、例年、夏は中国やアメリカからの観光客が中心だが、今年はフランス国内からのツアー問い合わせが急増しているという。先日見たニュース番組でも、海辺で取材を受けたご婦人がこう答えていた。「毎年、バカンスは国外に行っていたけれど、今年は国内旅行だけにしているの。マスクを常に鞄に入れてね。」