H-1Bビザの制度変更、米国のテック系企業に打撃

Photo by Drew Angerer/Getty Images


H-1Bビザ制度は、もともとは、テック系企業が最高の人材を集めやすくするために制定されたが、その後、ある意味では、職の維持をめぐる不安によって労働者を職場にしばりつける手段として使われるようになった。これは、ハイテク労働市場を弱体化させる方法としては非常に効果的なやり方のひとつであり、グローバルな賃金水準のようなものを生み出している。グローバルな賃金水準とは、バンガロールの生活費がサンフランシスコ・ベイエリアのそれと同じであれば適切に機能するだろうが、実際にはそうではない。

カナダ、イギリス、オーストラリアは、米国とはまったく異なるテック系労働者の移民政策を打ち出しており、国内産業の強化と社会的結束の構築を目標に掲げている。

一方で、米国のテック系企業は一貫して、国内の労働者が不足していると不満を漏らしている。トランプが大統領に就任した2017年には、テック系企業の多くが、国境に壁をつくるという政策を足がかりとして利用し、トランプ政権の移民政策を批判した。ただしその批判は、自分たちにとって最も重要な意味を持つ移民政策、すなわち、高スキルのテック系労働者に関するものだった。テック系企業は「ニューヨーク・タイムズ」紙に論説まで書き、トランプの移民に対する姿勢に軽蔑を示したが、彼らは不法入国者のことを気にかけていたわけではない。彼らが心配していたのは、H-1Bビザを保有するソフトウェアエンジニアと、上級学位を持つ国際的な大学生のことだった。

トランプは、米国の高スキル労働者を増やしたいと述べている。ただし今回の大統領令は、パンデミックにより最近解雇されたテック系労働者を守るためのものだ。

翻訳=梅田智世/ガリレオ

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