H-1Bビザの制度変更、米国のテック系企業に打撃

Photo by Drew Angerer/Getty Images

外国人のソフトウェアエンジニアなどITスペシャリストを雇用したい企業が、またもやトランプ政権のアッパーカットを食らうことになった。10年以上にわたって、主にインド出身のテック系労働者により雇用ギャップを埋めてきた企業にとって、これは大打撃だ。

そうした企業に言わせれば、雇用ギャップの原因は、国内のSTEM、すなわち科学(Science)、技術(Technology)、工学(Engineering)、数学(Math)人材の不足にある。

ドナルド・トランプ大統領は8月3日、次のように述べた。「今日は、連邦政府が非常にシンプルなルールを守れるようにするための大統領令に署名する──米国人を雇え、というルールだ」

就労ビザ「H-1B(特殊技能職)」のもとで雇用されている全労働者の3分の2近くは、インド出身だ。その大半は、最終的にはインド系の多国籍IT企業――インフォシス(Infosys)やタタ・コンサルタンシー・サービシズ(Tata Consultancy Services)の米国支社で働いている。ただし、アマゾンやフェイスブック、デロイト、IBMといった企業も、外国人テック系労働者を雇用している。

マイク・ペンス副大統領は次のように述べている。「懸命に働く米国人ではなくH-1Bビザ労働者を使う、という方針を反転させるつもりだ」

8月3日に署名された。この大統領令により、労働長官と国土安全保障長官には、大統領令の日付から45日以内に、「H-1Bビザ保有者の雇用によって生じる、賃金や労働時間への悪影響から国内のテック系労働者を守るための措置」を法律の範囲内で講じることが求められる。これには、間接的な雇用主を含めたすべてのH-1Bビザ保有者の雇用主に、大統領令の要件を遵守させるための措置も含まれる。

国外出身の委託契約労働者を使う大きな利点のひとつが、そうした労働者は職を渡り歩かないことだ。ライバル企業がより高額を提示して引き抜くのは簡単ではないため、彼らはあまり移動しない。そのほか、業務時間を延長できるという利点もある。H-1B労働者は、別の組織(インフォシスなど)に属していて、委託契約により地元の企業(たとえばCVSなど)に出向しているケースが多い。H-1B労働者は常勤社員と一緒に働いているが、多くの場合、常勤の雇用者と同じ時間帯には働かない。

一部の企業では、インド出身の労働者を雇用できない場合、一部のテック系業務を国外へ移すことを迫られる可能性もある。

H-1Bビザ制度の批判派は、このビザ制度により、職に固有のスキルが米国のIT労働者から国外の労働者に移転されざるを得なくなるため、最終的にその仕事の国外流出が助長されると主張している。
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翻訳=梅田智世/ガリレオ

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