8月某日、報道関係者向けに実施された体験会に筆者も参加した。CESでは停車したまま展示されていたVISION-Sの「走り心地」を報告したい。
ソニーが誇る“最先端”を紹介するためのコンセプトカー
VISION-Sは4人乗りスポーツタイプのセダンだ。ソニーの社内デザイン部門であるSony Designによる設計図を元に、大手自動車メーカーの受諾生産を手がけるオーストリアのマグナ・シュタイアーが組み上げた。将来はソニーのエンブレムを付けたVISION-Sが世界の街中を走り回るのかと言えば、さにあらず。
VISION-Sはあくまでも“コンセプトカー”なのだ。次世代の自動運転車やコネクテッドカーのためにソニーが得意とするテクノロジーを活かす方向性を模索し、パートナーに紹介・提案することと目的に試作された。
VISION-Sはソニーの先進運転支援のための技術を実際のクルマに乗せて披露するショーケースだ
ではソニーはVISION-Sを通じてどんな先進技術をアピールしたいのか。ひとつはADAS(先進運転支援システム)等をサポートするセンシング用途の技術だ。現時点のVISION-Sの試作機には合計33個の運転支援のためのセンサーが搭載されている。
例えば車両から光源を発して、その光が対象物に反射して車両に搭載するセンサーに届くまでの「光の飛行時間(時間差)=Time of Flight」を検出。対象物までの距離を測定する「ToFセンサー」は、人間の目では捉えきれない暗がりの中にいる人物や障害物を避けながら、安全な走行を実現するために有効なテクノロジーとして期待されている。
あるいは車両に積んだイメージセンサー(カメラ)によってキャプチャした高精細な画像と、ToFセンサーのように光検出による測距を行うLiDAR、ミリ波レーダーなど異なる種類のセンサーから取得したデータを融合して、自動運転の走行支援に活用する「センサー・フュージョン」はセンサーメーカーであるソニーだからこその強みを発揮できる領域として強くアピールしている。
センサーが取得したデータに対して高度な信号処理をかけてノイズ除去と最適化を行うことで、逆光や濃霧、雨の降る夜間など、運転が困難な環境下にもドライバーの安全運転をサポートする情報が導き出せる。
サイドミラーの位置に搭載するカメラで撮影した映像を車内のディスプレイに表示する