公道での試験走行は「年度内実施が目標」
VISION-Sの試作機はまだナンバープレートが取得できていないため、走行デモは東京・品川にあるソニー本社ビルの敷地内でコンパクトに実施された。短時間の試乗だったが、EVならではの滑らかな走行と力強い加速を体験した。
自動車としてのデザインにも高級感があるし、車内空間も贅沢な気分で過ごせるようにしっかりと作り込まれている。台数を限定して、ぜひ“ソニーの自動車”として販売してみてもいいのではないかと改めて思ってしまう。
ガラスのシースルールーフを採用する車内空間は明るく広々としている
試乗体験で「ソニーのセンサーの実力」も目の当たりにできるものと期待していたが、残念ながら今回そのデモンストレーションはなかった。ソニーでは、VISION-Sを公道で走らせて行う試験走行は欧米日の各地域で順次始める計画を立てており、国内では年度内の実現に向けた準備が進められているそうだ。
車の成長と進化をタイムリーに
ソニー 執行役員 AIロボティクスビジネス担当 AIロボティクスビジネスグループ 部門長の川西泉氏に、VISION-Sの発表後の反響を訊ねた。やはり自動車メーカーや自動車部品のサプライヤーからもVISION-Sのテクノロジーに対する多くの引き合いがあるという。今後行われる予定の実践形式による試験走行など、様々な動向にも強い関心が向くと思う。
ソニーの川西泉氏に今後に向けた取り組みを聞いた
VISION-Sには5Gネットワークへの“常時接続”を実現するための通信システムも搭載される予定だ。川西氏は「将来はコネクテッドカーを5Gネットワークに常時接続して、車の成長と進化をタイムリーに、かつ柔軟にサポートできるプラットフォームを提供したいと考えている。音楽・映画などストリーミングコンテンツを車内で楽しむためのエンターテインメントシステムも含めて、ソニーの得意とする技術を結集して『オートモーティブとITテクノロジーの融合』を力強くリードしていく」とコメントしている。
5Gネットワークに常時接続して自動運転をサポートしたり、エンタメコンテンツを受信しながら楽しめる技術も提案していく
一方では春から全世界に新型コロナウイルス感染症の影響が広がり、2020年まで順調に伸びてきたコネクテッドカーやモビリティのビジネスにも大きなインパクトを与えている。大勢の人々がウイルスとの共存を求められる時代に、狭い車内空間を共有する相乗り型のライドシェアを想定したモビリティや関連するサービスは、その在り方自体を再考せざるを得なくないだろう。
でも一方では、個人が感染の影響を避けて移動できる自家用車をより安全に運転できるようになる技術、交通渋滞や事故を未然に防ぐためにAIを活用する交通制御・管理システムへの期待はよりいっそう高まるものと考えられる。ソニーの川西氏も「移動のニーズがなくなることは考えられない」としながら、ソニーとして今後も技術革新を通して次世代のモビリティの成長に貢献していく考えを語ってくれた。