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2020.08.13

休暇は本当に必要か? 生産性との関係から考える

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これまで10年間、自分自身でも12カ月のうち1カ月を丸々休暇に充てるライフスタイルを続けてきました。1カ月休暇を取って家族とハワイに赴き、ただ暮らし、ただ過ごしています。

最初の1週間は、疲れている脳を日常から切り離して休め、ニュートラルな状態に戻していく時間にしています。そして、最後の1週間は、打ち合わせの準備をしたり、アポイントを調整したりと日常に戻る準備をしています。

なので、本当に空白なのは間の2週間だけ。日中は子育てをして家族と過ごしているので、夜だけが自分の時間です。その時間を使って、仕事と全然関係ない、宇宙物理学の本や長い歴史の本などをゆっくり読んでいます。

この1カ月を、ぐっと圧縮して2週間にしてもいいかもしれませんが、真ん中の空白の時間は多ければ多い方がいいと思っています。

余暇や休暇には心身を休める他に、普段の生活とは無関係な情報をじっくりとに手に入れる意味があり、この時間が取れるのであれば出来るだけ多く取りたい。体を休めるだけなら1週間でも十分ですが、この豊かな時間は多ければ多いほど良いからです。

「1カ月間も仕事を休めない」という方もいるかもしれませんが、僕自身、「1カ月も休むなんて大丈夫ですか?」と言われるより、むしろ「それは良いですね、自分もそういう風に暮らしたい」と言う人が多かった。それは結局、多くの人が長く休むことをなんとなく求めていたり、必要としていたりするのかもしれません。

また、一方で、「一切休暇を取らなくてもいい」という人もいますが、そういう人たちは、仕事と何か別のことへの切り替えが普段から上手にできているのだと思います。

長い休暇を過ごさなくても、その人ならではのルーティンを持っているなど、余白を日々の生活に取り入れるのがうまい人はいると思います。そういう人にむしろ少し憧れます。

在宅ワークの本当の課題


ミラツクでは、設立時の10年前から完全リモートワークなので、常在のオフィスはありますが出勤はありません。どこで働いてもいいし、休暇も自由に取れるようになっています。

実際、職員たちも、どこで働いてもいいので自らの意思で遠方に引っ越したり、長い休暇を取ったり、自分のリズムに合わせて休んだりしています。

急に在宅ワークに移ることで現れる課題は、今まで通勤時間中に無意識に取れていた余白の時間と、そこでできていた気持ちの切り替えが、なんとなくできなくなったことにあるのではないでしょうか。

だからこそ、在宅ワークの中で、気分を切り替えられるような余白の時間を持つことができるかが重要ではないかと思います。

特に現代社会では多くの人は、日々のニュースや無意識に入ってくる多くの情報で、脳や気持ちに余白が足りていない状態にあります。

そして、ニュースも人が振り向くような情報、つまり危険に関する情報と噂話を積極的に扱う。人間は、700万年前に誕生し、その後、本当に長い間、生きていくために危険な情報や噂話に脳が反応するようになってきました(実際には、そうした人たちが生き残ってきた)。

この古い脳の力はとても強いです。
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構成=守屋美佳

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