スウェーデンで医療崩壊が起きなかった理由 現地日本人医師の考察

今年7月、スウェーデン、ゴットランド島のレストランに並ぶ人々(Getty Images)


スウェーデンの輸出のGDPにおける割合は47%であり、輸出量の73%はヨーロッパ諸国で、残りはアメリカと中国である。したがって、全世界を巻き込んだパンデミックでは、内需だけではなく外需への影響は避けられないため、スウェーデンの経済も大きな打撃を受けた。2020年第一四半期のGDPは、スウェーデンはユーロ圏で唯一のプラス成長した国であった。第二四半期におけるGDPの落ち込みは8.6%で、他のロックダウンしたヨーロッパ諸国ほど経済への打撃は受けなかったと考えられる(図11)。

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図11:EU諸国各国の輸出のGDPにおける割合

しかしながら、国により内需外需のバランスや、パンデミックにおいても需要があるかどうか(例えば、医薬品の輸出であれば影響を受けない)など個別の状況があるため、GDPで比較をすることは必ずしも適当であるとは言えない。そのため、感染症による被害状況や政策の違いが経済に与える影響度を判断することは難しい。

入院患者、ピーク時の20分の1に


パンデミックの第一波が収束し、スウェーデンで最も多くの感染患者を治療したカロリンスカ大学病院でも、入院治療を受ける感染者がピーク時に比べ20分の1以下の20名程度になった。病院は通常診療に戻り、医療従事者も4週間の夏季休暇を取得できている。国内では、ソーシャル・ディスタンスを取ること、衛生の徹底、50人以上の集会禁止、症状があれば自宅待機、高齢者には屋外で会うことなどの対策は続けられている。

通常は前乗りで料金を支払って乗車するストックホルムの公共バスも、運転手を感染から守るために前乗りが禁止され後ろ乗りで、事実上、無料で乗車できる。また、秋以降も在宅勤務が可能な者は在宅勤務を継続するように推奨されている。一方、保育園、小中学校は、今まで通り開校、高校も秋の新学期から開校が予定されている。

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2014年3月、スウェーデンのストックホルムで小学生たちが登下校する様子(Getty Images)
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文=宮川絢子

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