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ロックダウンの一環として、学校などの教育機関の閉鎖についても議論された。スウェーデンでは、子供が教育を受ける権利が重視された。家庭環境に恵まれない子供が登校できなくなることで起こる弊害や格差の拡大が考慮された。また、学校が閉鎖されることで、医療従事者の約10%が勤務できなくなる試算で、そうなれば、医療現場を維持することが難しくなることが予測された。そのため、高校・大学などは遠隔授業となったが、保育園、小中学校は閉鎖されることはなかった。

ただし、感染拡大の程度によっては閉鎖しなければならないこともあるとして、学校を閉鎖できるように新法を整え、また閉鎖した場合であっても、保育や学童のサービスを受けられる親の職種のリストが発表されていた。スウェーデン社会を維持するために必要な職種とは、エネルギー供給関連、金融サービス、貿易・建築・製造業、医療・介護、情報通信、交通輸送、食品、行政、裁判所・警察・軍隊、公共社会保険、交通機関などであり、危機管理庁がリストを作成していた

多くの死亡者が出た介護施設


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図6:70歳以上の新型コロナウイルスによる死亡者と介護状況

2019年にはスウェーデンにおける70歳以上の高齢者は約150万人であった。19万1910人が自宅でヘルパーの助けを借りる要介護者であり、7万9410人が介護施設に居住する高度要介護者であった(2020年1月時点)。つまり、70歳以上の高齢者のうち、約18%が要介護者である。スウェーデンの新型コロナ感染症による死亡者の90%が70歳以上の高齢者であり、死亡した高齢者の約80%が要介護者である(図6)。

スウェーデンで高齢者を中心に死亡者が多く出たのは、介護施設でのクラスターが多発し、自宅に住む高齢者へもヘルパーを介して感染が持ち込まれたためである。この周辺については、前稿を参照されたい。

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図7:介護施設における居住期間(日)の中央値(2018年)

多くの犠牲者が出た介護施設であるが、介護施設の入居者の過半数は認知症を患っており、残りは、基礎疾患を複数持つ全身状態の良くない高齢者である。入居してから死亡するまでの期間は比較的短いことが知られている(図7)。入居期間が中央値で2年前後というこのデータは、予後が長い認知症患者を含むため、認知症以外の患者に関してはさらに短くなる。

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図8:介護施設入居後18カ月での生存率

同様に認知症の患者を含んだデータであるが、入居後18カ月までに約40%が死亡することがわかっている(図8)。介護施設の入居者は予後が良くないという理由により、社会庁は、介護施設での感染者は原則として病院には搬送しないとする指示を出していた。これは、新型コロナ感染症に限るはずであったが、介護施設で常駐医師がいないなど医療従事者が不足しており、医師が遠隔診断で病院に搬送しない判断をしたケースもあったようである。

その中には、適切な診断が下されないまま、救命目的の治療ではなく緩和治療に自動的に移行したケースもあり、不幸な転帰をとった高齢者も存在した。この点は、大きな社会問題となっており、今後、外部調査委員会の調査により、改善すべき点が明らかにされることになっている。

文=宮川絢子 編集=石井節子

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