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図2:入院者数推移

ICU治療が必要な重症者も減少し、入院者数は激減している(図2)。

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図3:週毎の新規感染者数と重症度。「公衆衛生庁ホームページより」。

3月に感染が急拡大し、感染者の追跡調査を諦めて以降、PCR検査は入院が必要な重傷者に限り行われていたが、徐々にPCR検査のキャパシティーは拡大し、6月に入りストックホルム市ではPCR検査や抗体検査を無料で行うようになるなど、PCR検査数が大幅に増加した。検査数の増加に伴い、新規感染者は一時的に増加したが、増加したのは軽症者だけであった(図3)。

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図4:週毎のPCR検査数と陽性件数(または人数)の推移。「公衆衛生庁ホームページより」。

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図5:PCR検査陽性率の推移。「公衆衛生庁ホームページより」。

そしてその後、新規感染者数(新規陽性者数)もPCR検査陽性率もともに減少してきている(図4・図5)。

スウェーデンでは6月後半から夏季休暇期間となった。国民は国内での移動制限を勧告されていたが、それが解除され、国内であれば自由に移動できようになった。EU内の渡航制限勧告も、特定の国を除き解除された。もともと国民は、それぞれの判断である程度通常の生活を行ない、休暇期間に入り、その自粛生活にも少し緩みが出ているようにも感じられるが、現在まで感染拡大の再燃は見られていない。

何故スウェーデンはロックダウンしなかったのか


このパンデミックで感染対策の指揮を取るスウェーデンの国家疫学者、テグネル氏は、ロックダウンにははっきりとした学術的エビデンスがないとした。そうであるとすれば、スウェーデンの政策が「壮大な社会実験」と呼ばれるのは不本意である。今までに経験したことのない今回のパンデミックにおいて、ロックダウンすることも、ロックダウンをしないことも、どちらもある意味で社会実験であると言えるのかもしれない。

ロックダウンという治療には、感染拡大抑制という効果と同時に、看過できない副作用がある。スウェーデンの専門家グループは、効果と副作用のバランスを考慮して「ロックダウンには、副作用こそあれ大きな効果はない」とした。

また、今回のパンデミックは長期戦になることが予想されたため、長期間持続可能な政策が望ましいが、ロックダウンすることは、経済的にも国民の精神衛生上的にも長期間の継続は難しいとした。しかしながら、実際には国民の日常生活にはある程度の制限が加わっており、部分的ロックダウンであったといえる。

ロックダウンができなかった大きな理由の一つは、憲法の縛りがあったことだ。スウェーデン憲法では、国民の移動の自由が保証されている。つまり、国が国民の移動を規制できないことになっている。

また同憲法では、公衆衛生庁などの公共機関は政府とは独立しており、政治主導の意思決定はできないことになっている。そして、感染症対策に関する法律には、感染症対策を担当するのは公衆衛生庁であると明記されている。つまり、感染症対策は政府の影響を受けることなく、公衆衛生庁が指揮を取ることが法律上担保されているのだ。

文=宮川絢子 編集=石井節子

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