今回の禁止令は “Clean Network”と呼ばれるプログラムの一貫だが、実行に移された場合、中国企業のアプリであるTikTokやWeChatがアップルのアップストアやグーグルのPlayストアからダウンロード出来なくなる。
TikTokは米国でも人気のアプリだが、WeChatの禁止はアップルに予期せぬ影響をもたらすかもしれない。深セン本拠のテンセントが運営するWeChatの利用者数は、中国で約10億人、世界では12億人とされている。
中国を訪れたことがある人なら、WeChatなしで中国で暮らすのは不可能であることが分かるだろう。このアプリは単なるメッセージアプリではなく、決済ツールの役割を果たす、人々の暮らしに必須のものだ。
もしも、アップルの公式ストアからWeChatが消されたら、アップルのデバイスを中国の消費者に売り込むのは非常に難しくなる。アンドロイド端末の場合は、グーグルの公式ストアからWeChatが消えても、サードパーティのストアでアプリのダウンロードが可能だ。しかし、iOS端末の場合はアップストア以外からのアプリのダウンロードは、ジェイルブレイク(脱獄)と呼ばれる特殊な処理を加えない限り不可能になっている。
中国はアップルにとって必須の市場だ。調査企業カナリスの昨年のデータでは、アップルの全売上のうち20%が中国からのものだった。今年の第1四半期の中国内のiPhoneの売上は、135億8000万ドル(約1.4兆円)に達していた。
今年の秋に発売されるiPhone 12にWeChatがインストール出来なくなるとしたら、アップルの売上は大きく落ち込むはずだ。ただし、良い報せと言えるのは、トランプ政権が今回のルールをどのように導入するかを、まだ明かしていない点だ。
ニュースサイトThe Vergeが、各国のテクノロジー規制に詳しい専門家にインタビューを行ったところ、トランプ政権はこれらのルールが与える効果を十分に理解していない、もしくは、実際に導入する際の明確なアイデアを持っていないと考えられるという。
いずれにしろ、アップルが今回の禁止令の先行きを注意深く見守っていることは確実だ。そして、近い将来にiPhoneがWeChatをインストールできなくなった場合に、恩恵を受けるのはトランプ政権が敵視するファーウェイになりそうだ。中国のモバイル端末市場において、ファーウェイは36%のシェアを誇っている。