料理カメラマンだから生み出せた「男のフライパン手抜きめし」

10'000 Hours/Getty Images

コロナ禍で男子厨房に入って夫婦喧嘩が増えているらしい。しかし、料理カメラマンとして数千皿を撮影してきた筆者が編み出したのが、料理が下手でも喜ばれる「手抜きめし」。門前の小僧、習わぬ料理をつくってみよう。


料理カメラマンとして、これまで下町グルメから三ツ星レストランのフルコースまで数千皿の料理を撮ってきました。一番おいしい瞬間はすべてカメラに食べさせてきましたが、この仕事をしていなければ、出会わなかった味も少なくありません。

料理カメラマンは料理に詳しいか? と問われると、「いいえ」と答えるしかありません。料理を知らなくても撮れるし、知らない方が先入観なしで勢いある写真が撮れることもあります。ただ、日々、いろんな料理を撮っていれば知識は増えるし、その都度、味見していれば舌も肥えてきます。

さまざまなジャンルの料理を少しずつ広く浅く味わえる職業はもしかしたら料理カメラマンを置いてほかにないかもしれません。「門前の小僧、習わぬ経を読む」ではないですが、知らず知らずに料理のエッセンスをつかむ機会に恵まれてきました。

ここで紹介する料理は、そんな僕が考えたレシピになります。だからプロの作る料理ではありません。誰かに習ったわけでもありません。ただ、撮影のために入り込んだプロたちの数々の厨房で、僕なりに匠たちが放つ「空気感」のようなものだけは吸収してきました。シェフの手元10数センチまで近づいてカメラを向け、時は怒鳴られながら、料理人たちと対峙してきた味を僕なりに消化・表現したのがこのフライパン料理です。

コロナ禍の在宅男子はフライパンを握れ!


なぜフライパンなのか? と思う方も多いかと思います。コロナ禍でステイホーム期間中、自宅キッチンで料理を作る機会が急に増えました。基本妻が作ってくれても、在宅している限り男子も何か作る機会が増えてくるし、料理をすることでいい気分転換にもなります。ここで最も活躍したのがフライパン料理でした。

「男の料理」といえば休日に凝った食材を揃え、キッチンを半日ほど占領して調理するというイメージですが、ステイホームの平日昼間にこんなことをやれば、とたんに妻の怒りを買うだけです。

うちは妻、中2娘の3人家族。平日昼間にキッチンを使うのは短時間で済ませなければなりません。ステイホームになった夫がにわかに料理を始めても、家庭料理に関しては百戦錬磨の妻に敵うわけがないことを実感しました。しかもキッチンの道具や調味料はすべて妻が配置したものです。「勝手が違う」という言葉があるように、他人の「お勝手」では、菜箸の場所さえ聞かないと探し出せない。キッチンに迷い込んだ在宅男子は迷える子羊です。小学生のように妻にいちいち場所を聞かないと先に進めないというのが事実です。
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料理・写真・文=小林キユウ

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