ビジネス

2020.09.11

これからの経営者にはどんな視点が必要か。VCが語る「社会に望まれるサービス」のあり方

d3sign/Getty Images


コロナ禍で「本当に必要」なサービスが明らかに


元榮:石丸さんはアフターコロナの世界はこれからどのようになっていくと思いますか?

石丸:今回、社会の中でいろいろな変化が起きました。そのなかでひとつ大きな変化として、技術に対する認知の広がりがあるかと思います。

たとえば「出社できない」という不便な状況があった。それを解消できる技術を取り入れる姿勢は、社会の中にかなりのレベルで広がりました。弁護士ドットコムが運営しているオンライン契約サービスの「クラウドサイン」はその最たるものだと思います。

これまでクラウドサインの位置づけは、新しいサービスや技術に明るい人が知っている「あったら便利なサービス」でした。これがコロナ禍を期に、社会にとって「なくてはならないサービス」に一気に近づいた。あったらいいなというサービスや技術が、より広がりやすい環境になったのは間違いないと思います。

これは私たちのような投資家にとって、新しい状況が生まれているということでもあります。本当に必要とされるサービスと、必要がないサービスの見極めがより大切になっていくだろうと思うんです。

また、テクノロジーやサービスだけではなく、より本質的なもの、たとえば家族の大事さ、健康の大切さ、オフィスで同僚と顔を合わせることの意味などに、改めて人々が気づいたのも大きな変化のひとつです。こういった本質的なものに根ざした、それらを促進するようなサービスは、より広がりやすくなったのかもしれませんね。

元榮:スタートアップのバリュエーション(企業評価価値)はどうなると思いますか?

石丸:一時期、投資家界隈では下がると言われていたのですが、2020年4月にアメリカのベンチャーキャピタルに聞いた話では、投資額やバリュエーションは下がっていないとのことでした。ただ、日本は事業会社がベンチャー投資を支えていますから、今後、予算を縮小する動きはあるでしょうね。

コロナ禍以降、GAFAも含めて遠隔でコミュニケーションを取るサービスの利用が促進されているので、その周辺領域の株価は上がっていますよね。テクノロジーが世の中に浸透する、または根ざすというところに関心がより集まっているので、そういった分野にお金が集まりやすくなっているかと思います。
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文=元榮太一郎

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